けまろう

フレンチアルプスで起きたことのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

『フレンチアルプスで起きたこと』観賞。パルムドール受賞作の『ザ・スクエア』が非常に好みだったので観たかった作品。『ザ・スクエア』同様素晴らしい皮肉っぷりと美しい画作りだった。画面構成も巧みで前半の家族でのスキーのシーンなど唸ってしまう。
「人間は危機に面したとき英雄であろうとするが実際真の危機に直面したとき英雄ではいられない」という劇中の台詞がそのままテーマ。人工的に起こされた雪崩にビビった夫トマスは妻と子供達を置いて一目散に逃げてしまう。そこから生じる家族の不協和音。夫は逃げていないと言い張るが妻のエバは執拗に夫の無責任さを責め、日を重ねるごとにトマスは追い詰められていく。小さいことだと収めようとするトマスと執拗に拘るエバの攻防がシュールで笑える。これこそまさにアイロニカルでシニカルな作品だ。
マッツとファンニのやり取りも良いスパイスで、夫婦の間を良い具合に掻き回していく。親身にトマスに寄り添おうとするマッツの台詞が個人的にはツボ。「家族を後から助けるために逃げる方が良いと判断したんだよな?」というフォローにならないフォローでトドメを刺されるトマスがシュール過ぎる。
最後のオチも好き。帰りのバスで交通事故が起きそうになり一目散に逃げ去るエバ。結局エバも身の危険を感じたら子供と夫を置いて逃げてしまう人間だったのだ。
リューベン・オストルンド監督の次回作にも期待が高まる。
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