Masato

ソウォン 願いのMasatoのレビュー・感想・評価

ソウォン 願い(2013年製作の映画)
4.8

冷蔵庫の国

若干ネタバレ有り…




牛骨でぶっ叩く映画から、こんな映画まで…ほんと韓国映画恐れ入る。人の心に重く優しく語りかける傑作。「トガニ」や「7番房の奇跡」が好きな人はマスト。

2008年の幼女暴行事件の裁判記録等を基に作られた映画とのことで、実話ベース。この映画の良いところは、事件そのものをメインにすることはなく、「ルーム」のように、事件のその後の娘を描いている点。それに加えて、周りではどのようなことが起きるのかも描いている。

2008年だとトガニの映画が作られる前で、児童の性的虐待を厳罰化するトガニ法が出来ていない。司法は公平に見えて、全然公平ではない。真実が真実のまま裁かれることはない苦しみ…この世界は公平じゃない。保育園児たちに車が突っ込んでも、保育園サイドが糾弾され、親子にプリウスが突っ込んでも、未だに逮捕されないジジイもいる…この世界が苦しい…

それでも、生きる希望を見つけて、家族や周りの人たちで必死にソウォンをトラウマから助けようとする様が素晴らしく泣ける。韓国ならではのコメディ要素も忘れることなく、泣かせ上手な韓国映画の醍醐味も味わえる。お父さんもお母さんも同時に濃く描かれていて、人間臭くて脆い姿も良かった。

憎くて苦しいこともある一方で、情念によって人が助けられるということもある。その全てが現実であるということ。ここは何もかもが混ざった坩堝。何もかもが入れられる冷蔵庫の国。

相手を憎むことは当然だと思う。だけども、1番大切なのは、娘が笑顔で元気でいられること。そのことを1番に考えなければならない。ジョシュビリングスというユーモア作家の名言の中にこういったものがある

-恨みを晴らしたければその相手を許せ。それ以上の復讐はない-

復讐を映画にしつくしてきた韓国映画が、自らの慣習とも言える復讐文化にアンチテーゼ。許して前へ進むことが大切なのだ。

もし、自分の子が…その時はどうなのだろうか。想像もつかない。その時、私は相手を許せるのだろうか…?

トガニの時のように、また再審されて正当な罪が課されることを願いたい…
Masato

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