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テロ、ライブのRenkonのレビュー・感想・評価

テロ、ライブ(2013年製作の映画)
4.5
元国民的アナウンサーユン•ヨンファ。
蹴落とし合いの出世レースから外れた今、ラジオのDJブースが彼に残された唯一の居場所。
リスナーの戯言に辟易としながら応える彼は、その数分後、このブースが出世と人質をかけた「戦場」になるとは、この時思いもしなかった。
序盤から最後まで、DJブースのみで繰り広げられるスリリングな心理戦、
息もつかせぬ展開に、手に汗握る緊迫感が常に張り詰めていた!

この作品は「交渉人」や「天国と地獄」のように、犯人が人質を天秤にかけるだけのお話ではない。
犯人との交渉劇を自らの出世に利用しようとしたユンキャスター。
だがその裏で、テレビ局や警察、政府による、更なる悪しき業の姿を彼は目の当たりにする。
人質の被害を意に介さないテロ対策科の女の「今日は定時で帰れそうだわ」というドヤ顔。
私利私欲しか脳にない局長の「今度飲みに行こうか」という常套句に、強い苛立ちを覚えた。

思えばニュースキャスターって、全国の視聴者を前に「生放送で」ニュースを伝えるという、相当神経を擦り減らす仕事な訳で、ましてやいつ左遷されるかわからない戦場の様な場所なのである。
そんなキャスターのストレスを、ハジョンウの肌荒れが物語る(ただの吹き出物か)。

「爆破の度合いが集団テロレベルじゃねぇか」とツッコミたかったが、それすら吹き飛ばしてしまうくらい最高に面白かった。
耳に爆弾を仕掛けられ身動きが取れない中、局長や警察に指示をされるハジョンウが「事件はスタジオで起きてるんだ!!」と叫びだすんじゃないかと思ったけど、それは無かった。
これから夜のニュースを見る時は、キャスターの気苦労を労いながら観たいと思うが、結局大好きな井上あさひさんを目で愛でるに留まりそうである。

9/3 @シネマカリテ
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