小波norisuke

めぐり逢わせのお弁当の小波norisukeのレビュー・感想・評価

めぐり逢わせのお弁当(2013年製作の映画)
4.0
欧米でインド映画としては異例のヒットを記録したというこの映画、なんだかうなずけてしまう。筋書き自体は、孤独な主婦と妻に先立たれた男が文通を通じて愛を育むという、さして新鮮とも感じられないメロドラマであり、特段、大きな盛り上がりがあるわけでもない。それでも、この映画は、インドの人々の暮らしについてあまり知識のない観客にとっては、エキゾチックな魅力に満ちており、温かな可笑しみがスパイスのように散りばめられている。

まず、お弁当の配達サービスというのが目新しくて、興味を惹く。そして、匂いだけでおいしいとわかるという、4段重ねのお弁当が、実に心そそられてしまう。孤独な主婦イラと上階のおばさんとの対話が愉快であるし、男やもめのサージャンがお弁当を広げる時のスリリングな様子など、イルファーン・カーンの抑制された繊細な演技が味わい深い。煙草の使い方も巧みだ。

何と言っても、さあいよいよ二人が会うという日の、サージャンの描写が、同じく老いに向かう我が身としては、とても切実なのだけれど、やはり可笑しくて笑ってしまう。

お弁当配達人たちが歌う歌も魅力的。

しかし、イルファーン・カーン、当時まだ40代なのに、早期退職とはいえ、もうリタイアを控えた、「古い宝くじは誰も買わない」などと自嘲する役かと、軽くショックを受ける。一昨年、訃報を聞いて驚いた。
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