ぽん

モーガン・ブラザーズのぽんのレビュー・感想・評価

モーガン・ブラザーズ(2012年製作の映画)
3.2
デリカテッセン的なカニバリズムの恐怖、田舎に生息するサイコ家族の餌食にされる都会人みたいな設定はまぁアルアルな気がしますが。ちょっと面白いなと思ったのは、この作品の目線ではサイコ兄弟の弟レジが主人公なんですよね。少々、知的にボーダーな感じのするこの男、横暴な兄に蔑まれ虐げられ自尊心を傷つけられてきたのがいよいよ兄の暴虐ぶりが露わになったのをきっかけにブレークスルーを果たす。

ホラーのわりに人間関係の描き方が丁寧な気がして最後の方ではけっこう彼にシンパシーを覚えてしまった。兄弟が暮らしてる家もキレイで。廊下に子ども時代の彼らを描いたスケッチ画が飾られていたりして、あら、この人たちちゃんと愛されて育ったんじゃないの?と思わせる。クライモリの家と大違い。

そして彼らに捕まる若者たち、こんな奴ら殺されていいよと言うありがちなバカ者たちかと思いきや、女の子はそうでもない。インモラルなシーンから見せるので観客には悪印象を与えてしまうが、それは脚本のヒネリ。前知識なしに見始めると最初のうちは人間関係が見えてこなくて軽く混乱して惹きつけられる。
でも、車中でのレジとの会話を聞いているうちに彼女の朗らかで快活な性格、孤独な中年男レジにさりげなく寄り添ってあげる優しさが見えてくる。(目的地まで連れてってもらおうっていう媚び作戦かもしれないが)

こういう設定のホラーって要は「田舎の呪詛」だと思います。都市化・近代化から立ち遅れた田舎のビハインドっぷりが怨念となって都会人に襲い掛かるという。
途中で出てくる「妖精の国」というテーマパーク?もいいですね。こういうの田舎に行くとあるよねーって言うコンセプトが中途半端な安っぽい遊興施設。作り込み方が良い。ここのシーン、無駄に長いのだけどなんか分かります。作った側としてはたっぷり見せたいんでしょうね、これ。ここのカルト臭は侮れない。

いやはや、そんな熱く語るような作品じゃないのだけど個人的には面白く観たので長々と書いてしまいました。
ホラー・コメディと言うほどコメディじゃないけど愉しかった!
ぽん

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