小波norisuke

グッド・ライ いちばん優しい嘘の小波norisukeのレビュー・感想・評価

4.0
スーダンの内戦。耳にしていたとは思うけれど、ほとんど心に残っていなかった。目の前で両親を殺され、命からがら、何日も、何万キロも、乾いた大地を歩いて、途中、兄弟を弔いながらも、難民キャンプへと、戦渦を逃れてきた子どもたち。どんなに辛くても生き抜かなくてはという、強い心がなければ為し得ない。まだ小さな少年が、聖書を大切そうに抱えて歩く姿が印象的だ。

第三国受け入れ制度で、アメリカへと渡る。故郷を失う悲しみ。異文化で、少数者として生きていかねばならない。その苦労は計り知れないが、この作品は、あえてユーモアを交えて描く。(就職支援の担当者であるキャリーが、難民である彼らをいきなり自分の恋人の店に就職面接に連れて行ったことに、びっくり)。確かに、本人たちは必死であっても、すこし引いてみれば、可笑しく思えることもあるだろう。異文化が触れあい、理解し合おうとする様子に、あたたかみも感じる。

グッド・ライ。やさしい嘘。確かに、嘘をつかざるを得ない状況というのはあるだろう。だけど、ロスト・ボーイズほどには差し迫った状況に立たされたことのない者の目から見ると、あまりに大胆な嘘に、少しひるむ。この嘘で当座は切り抜けられるかもしれないが、後々、困ったことにならないかと、心配になってしまう。

2005年の和平合意以後、スーダンに帰還できた人たちも多いという。彼らのその後が気になる。
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