大島育宙

海街diaryの大島育宙のレビュー・感想・評価

海街diary(2015年製作の映画)
4.4
『怪物』に向けて何度目かの鑑賞。

会話と五感と衣食住の描き込みだけで
永久に観ていられる映像群。

いきなり服装が変わって季節の変化がスッとわかったり、ややこの姉妹には似つかわしくない口癖が(「アレ」とか)が伝播し、その源流が後から判明する(大竹しのぶ!)とか、ミステリじゃないのに観てるこっちが前のめりになってしまう仕掛けが周到に張り巡らされている。3Dとか4DXじゃなくても自分ゴトになれば没入できるよ。

いきなり葬式の場面から始まったり、
長女(綾瀬はるか)の恋人(彼との関係も後バラシミステリ)が終末医療に携わってたり、
次女(長澤まさみ)が顧客の遺産相続に直面して戸惑ったり、
三女(夏帆)の恋人はエベレストで死にかけて指を6本失ってるのに命知らずな仲間に相変わらず登山に誘われてたり、
すず(広瀬すず)以外の3人の周りにはじっとりと死の臭いがエピソードとしてまとわりついている。広瀬すずが生真面目なしっかり者の少女として登場して、少しずつ(特に次女の性格に引っ張られて)ふざけるように、敬語からタメ口になっていく変化がとてもナチュラルだ。広瀬すずって最初から演技うまかったんだなあ。

四女のすずも、死と共に三姉妹と合流した存在であり、瑞々しい生命と四季の話であると同時に、死をきっかけに繋がるコミュニティの話である。

8年前、低俗で即物的な大学生だった自分も感動して味わったつもりだったが、この映画の機微の1割も汲み取れていなかったと、30歳になった今ならわかる。生きることと死ぬことは対義語ではないし、打ち消し合わない。

・それぞれの恋人役が坂口健太郎、堤真一、身近な男性が堤真一、鈴木亮平、前田旺志郎、ととことんちゃんとした俳優しかいなくて是枝組の役者選びの基準の厳しさを感じる。レキシの池田さんはこの作品で演技のイメージがあったけど、意外に演技の仕事はしてないんだな、と調べて知った。もっとしてほしい。