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ザ・インタビュー(原題)のDDのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・インタビュー(原題)(2014年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ただ笑え!悪ノリコンビが放つスーパーアメリカン馬鹿映画

■新しい炎上ビジネスの形?世界を翻弄した世紀のB級映画
1年半ほど前、アメリカのソニー・ピクチャーズがサイバー攻撃を受け、同社が保持していた007シリーズ『SPECTRE』を含めた未公開作品の脚本数本が流出するなどの被害を受けた事件があった。事件当時、ソニーは「金正恩暗殺」を題材にした際どいコメディ映画、この『THE INTERVIEW』の公開を予定しており、その内容に怒った北朝鮮が行ったものではないかとまことしやかに囁かれていた。

51億円も投資した映画、ソニーも当初は予定どおり公開に踏みきるとしていたが、「上映館を爆破する」という脅迫を受けるに至って公開を断念する。これに対してはオバマ大統領が「北朝鮮のハッカー攻撃は米国に損害を被らせた」と「北朝鮮」を名指しで非難、ソニーには「いくじなし(大意)」とコメントしたことで、この映画への注目度は俄然高まった。

「現存する一国の党首を暗殺する」という内容は確かに過激ではあるが、この映画はひたすらにナンセンスである。最近は悪ノリ映画ばかりつくっているジェームス・フランコ&セス・ローゲンが「いつものお下劣とお下品に政治ネタをスパイス的に盛り込んでみました」という程度で、政治的風刺はごく薄い。そもそもそこに描かれている北朝鮮と金正恩像は「ありがち」な姿で、既出のイメージに悪の上塗りをするものでも、刮目に値する事実が暴露されているものでもない。

では、何が北朝鮮のかんに障ったかというと、恐らくは「金正恩の最期」の映像のインパクトだろう。少々やりすぎ感のある場面だが、全編にわたって「とにかく面白けりゃいい」のノリが溢れており、意図的な攻撃性は感じられない。こんな映画に世界(というかアメリカと北朝鮮)が熱くなったこと自体がネタになりそうだ。そもそもオバマ大統領はこの作品を観たのだろうか。

■越えがたきが「笑い」の国境とはいうけれど
政治家とセレブリティを容赦なくこき下ろした18禁人形劇映画『チーム★アメリカ/ワールドポリス』ほどの痛快さはないが、徹底的にふざけるという精神は見事。私生活でも仲のいい二人のくだらない日常会話の延長が見てとれるようなのも楽しい。お気楽極楽の愛すべきバカ映画だ。しかし仮に「事件」が起こらず、ソニーが普通に上映していたとしても、日本公開となったかどうかは怪しい。昨年、アメリカで公開され大ヒットとなったコメディ映画『SPY』は、ジュード・ロウ、ジェイソン・ステイサム、そして『ゴースト・バスターズ』のメリッサ・マッカーシーという豪華顔ぶれなのに、日本はDVDスルーだった。アジア受けしないのかといえば、台湾、韓国、フィリピンでは公開され、それなりの興収を挙げている。日本に笑いを。「笑えない」とか「つまらない」と切り捨てるのではなく、大げさな物言いかも知れないが、文化を理解するひとつとしてコメディ映画にもっと市民権を!本作は日本公開を求める署名活動が行われているようだが、活動が実って公開となることを願っている。
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