明石です

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)の明石ですのレビュー・感想・評価

3.8
かつてヒーロー映画で人気を博した落ち目のベテラン俳優が、過去の栄光を取り戻すべく演劇の世界に飛び込み、辛酸を舐めながら成功を掴もうとする話。ハリウッド俳優がブロードウェイで演劇に挑戦するという設定の時点でかなり私好み。

まず脚本が素晴らしい。脚本が練りに練られてる上に超実力派の俳優陣が揃いぶみ。アカデミー賞四冠は伊達じゃないですね。そういえば作中で扱われているレイモンド・カーヴァーの小説は大学生くらいの頃に読んだことある気がしますが、内容は全くといっていいほど何も覚えてない(と若干不安に思いながら見てたら原作ほとんど関係なかった)。脚本に関わった人が文学にも造詣のある人としか思えないくらい、台詞に素敵なものが多った印象。まあレイカーヴァーを題材にする時点で多かれ少なかれそうなのだろうけど。

舞台演劇を題材にした映画ですが、そもそもこの映画自体が演劇みたいだった。全体の雰囲気というか、セリフの運び方なんかが特に。「どうして私にはプライドがないのよ!?」「それは女優だからよ」みたいな、作り物めいたわざとらしい台詞の掛け合いを本気でやってる感じ。あと俳優さんの演技もいささかオーバーな感じ。そういういわば映画は「作り物であること」を肯定してる雰囲気が、そもそもセットも衣装も作り物であることを前提に行われる演劇になんとなく近いように思った。そのおかげで、どこからが舞台上で、どこからが舞台裏なのか分かりづらくなってる。もしかするとそれが監督の狙いなのかな?

また言うまでもなくカメラワークが超個性的。登場人物の背中や手元、肩越しの景色を撮るなかばPOVのような二人称視点。誰かが喋るときはその顔を常にドアップで映す。そういう特性からか、出てる俳優さんは演技力に定評のある実力派ばかりですね。マイケルキートン、エマストーン、エドワードノートン、ナオミワッツ。錚々たる面子だ。でも個人的にはこのカメラ視点、慣れてないせいか酔いそうになった。ちょっと動きすぎとかなは思う。

そういえば序盤で出てきたジョージ・クルーニーの話はすごく良かった。「飛行機で2列前にジョージクルーニーが座ってた...」の話。あれ好きだなあ。うんざりするほど具体的な話は人の心を動かす。いや、正確には私の心を動かす。まあスーパーのレジ袋くらい軽い心だろうけど。


——好きな台詞——
「あなたは誉め言葉が愛だと思ってるのよ」
「芸術家になれぬ者が批評家になるのは、兵士になれぬ者が密告者になるのと同じだ」
「目的は芸術じゃなくて存在のアピールでしょう」
明石です

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