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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のHIROのレビュー・感想・評価

3.8
かつて「バードマン」というスーパーヒーロー映画で一世を風靡した俳優のリーガン・トムソン(マイケル・キートン)が、再起をかけてブロードウェイの舞台に挑む姿を描いたお話。

独特な世界観でしたな(´Д` )

まずびっくりしたのは全編に渡る長回し。
まるで最初から最後までワンカットで撮っているかのような臨場感には圧倒されました。
それこそ人生には繋ぎ目なんか無いわけで、どういう道に進もうと結局は長い直線であることには変わりはないという意味がこの撮り方には込められているのかなぁと思ったりもしましたね。

そしてキャスティングが絶妙でした。
「バットマン」で主人公を演じたマイケル・キートンや「インクレディブル・ハルク」のエドワード・ノートン、「アメイジング・スパイダーマン」のエマ・ストーンという実際にスーパーヒーロー映画に出演した人が演じてるのも面白い。
また、ブロードウェイに出演することを夢見る売れない女優を演じたナオミ・ワッツなんかも、実際遅咲きの女優であるわけだから妙にリアルに感じたというか。
ワンカットであることも相まってまるでドキュメンタリーかのような雰囲気もあるかもしれないですな。

この作品の魅力はやっぱり出演者の演技合戦だと思います。
マイケル・キートンを始めエドワード・ノートン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツの鬼気迫る演技に引き込まれました。

この作品は単純に父と娘の物語であると思うんですよね。
エマ・ストーン演じる奔放な娘サムは麻薬中毒でめちゃくちゃ。
父親であるリーガンはそんな彼女に認めてほしかったのではないかと。
今では落ちぶれてしまったかつてのスーパースターが何とか這い上がるところをただ娘に見てほしかったんだと思います。

「昔は凄かった!」、「自分には才能が沢山ある!」、リーガンはそう信じて止まなかったわけだけど実際には何も無かった。
かつての輝きは無くなり世間からは忘れ去られていく一方で、こんな自分だって何か出来るかもしれない、頑張ればまた羽ばたけるかもしれない、そんな想いがリーガンからは伝わって来ました。
彼は羽ばたこうとする男、ある意味でバードマンそのものなのではないでしょうかね。
彼が包帯を外すところは今まで着けていた仮面をかなぐり捨てて新たに羽ばたくことを意味しているのではないかと思います。
サムが下から上を見上げ、遠くへ飛んで行く鳥を眺めるところからして余計にそう感じざるを得ないし、そうであってほしいと願うばかりです。

好き嫌いが分かれる作品であることは間違いないと思います。
至るところで皮肉を感じるし、捻って捻って脚本を書いたことが伺えましたね。
もはや面白いとか面白くないとかそういう次元の作品ではないのかなぁと思ったりもしました。



2015-46
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