静かな鳥

パシフィック・リム アップライジングの静かな鳥のレビュー・感想・評価

3.0
1作目が「王道」を貫いたからこその面白さなら、今回は同じ事はせず「邪道」で勝負してやろう、という製作陣の気概を感じる。しかし、それが成功しているのかどうかに関しては微妙と言わざるを得ない。

冒頭DJ Shadowの「Nobody Speak」を流しながらの主人公のモノローグシーンとか、カットの繋ぎ方も相まって何処かチャラい演出。その雰囲気が映画全体にわたって続くので、良くも悪くも「軽い」印象を終始与えている。

イェーガーの動きも前に比べて重量感がない。前作では戦闘シーンが夜に多かったが、それによって引き起こる画面の暗さがイェーガーの重々しさを醸す1つの手助けに少なからずなっていた事に、今になって気づく。今回は昼の戦闘シーンばかりなので尚更だ。また、(前作の繰り返しになるのを避けたのかもしれないが)戦闘時のパイロットスーツとかイェーガーの内部のディテールも、今作ではあまり見せてくれない。既視感のあるハイテク技術ばかり登場する。前はちゃんとキマってたイェーガー出動のアガる感じも希薄。前作から続投のキャラの扱いも首を捻ってしまう(この辺り、『キングスマン:ゴールデン・サークル』を思い出した)。

あと、本作ではイェーガーのパイロット2人の脳をシンクロさせる「ドリフト」という行為もただのお飾りになっていてもったいない。主人公の成長といったドラマ性も無いに等しいので、キャラクターの存在感もぼやけてしまっているのではないか。
あのテーマ曲をかけるタイミングも、ためにためるのでクライマックスで流すのか?と思いきや実際は違うし、変にアレンジヴァージョンになっていて盛り上がりに欠ける。結末も消化不良。何故か小物同士の闘いに見えてしまってカタルシスが少ない(サブロボにも活躍シーンがあるのは、前作と比べて良いと思う)。シャオ産業の中国人社長が唐突に活躍するのも謎。また個人的には、あのおまけシーンはシリーズものとはいえ一本の映画としてちゃんと完結させて欲しいと思った。

日本関連の描写もクライマックスの舞台を東京にした事で、より違和感を感じてしまうシロモノになっている。まぁ看板が変とか、富士山までの距離が2キロとかはハリウッド映画ならではの"味"と捉えた方が良いのかもしれないけど。

このように色々不満点を挙げつつも、(音響の良い映画館で観たのもあると思うが)意外と普通に楽しめてしまったのも事実。但し、その"普通に楽しい"のは明らかにデルトロの作家性に満ちた『パシフィック・リム』ならではのものでは無く感じる。ライトなアクション映画としては申し分無いが、あの作品の「続き」として観ると意味合いが変わってしまう。「人類vs.怪獣」の構図が中盤から揺らいでいくのは好きだが、それもラストでは有耶無耶だし…。果たして続編として本作をつくる意義はあったのだろうか。



余談
本作の撮影は『ちはやふる ー結びー』のクランクイン前だったらしく、新田真剣佑がカルタの練習をしているのが画面に映るのには笑ってしまった。
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