もう一ヶ月くらい前に観たけど、ロバート・ゼメキス監督の『ザ・ウォーク』もすばらしい作品だった。
今はなきワールドトレードセンターを再現したゼメキスの執念は、主人公のフィリップの「美」の追求と重なるから、ワイヤーの上で静かになされる自由を巡る彼の運動は、余計に感動的だ。
何度も自由の上を繰り返し歩く彼を見ながら、試行錯誤と鍛錬の末に得た自由も永遠には続かないと、2016年に生きるわたしは知っている。
フィリップが立った、NYのあの場所からの景色はもう見られないと思うと、たまらないものがあった。
冒頭からフィリップの一人称で語りかけられるので、彼（ら）の企みは成功していると予想されるけど、そんな「ネタバレ」にこの映画はひるむことなく、ツインタワーにワイヤーをかけるフィリップらの企みを犯罪活劇に仕上げていてお見事。
山場を巧みに作ったエンタテインメントの要所要所に「時間」「人生」「美」を問うてくる。
興行的に失敗、アカデミー賞はじめ賞レースでは技術部門以外ほとんど黙殺されているけど、ゼメキス作品としてもベストのひとつ、映画史上においても忘れがたい一作にまちがいない。
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