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不倫のakrutmのレビュー・感想・評価

不倫(1965年製作の映画)
3.7
関係を持つ二人の女性の言動に疑心暗鬼になる作家の男性を描いた、田中重雄監督の心理ドラマ映画。原作は、官能作家になる前の宇野鴻一郎が上梓した同名小説。

あまりにも直接的なタイトルであるが、実はまったく不倫の話ではない。結婚に否定的で自由恋愛を主義とする作家の佐分利は、聖子と麻樹という二人の独身女性と関係を持っている。和風美人の聖子は結婚願望があり、父親からも佐分利との結婚を催促されている。一方の麻樹は出版社に勤める現代的な考えをもつ自由奔放な女性。二人の女性はお互いの存在に気付いているが、佐分利はどうにかうまくやり過ごしてきた。しかし、聖子の妊娠が発覚したことで、佐分利は聖子と一軒家で同棲することになる。聖子と同棲している家に麻樹を招いたことで、三人の関係が変化していく。特に、聖子と麻樹がとても仲良くなってしまうことで、彼女たちの真意を測りかねる佐分利は、執筆も手につかないようになり、次第に疑心暗鬼になっていく。

ほぼ三人劇であり、佐分利の自宅での場面がほとんどである。男性にとっては夢のような生活に見えるが、実はそうではないというストーリーはなかなか面白い。二人の女性に振り回される優男を演じている川崎敬三ははまり役であろう。麻樹役の江波杏子の肉感的な雰囲気も印象的。前半を見る限りでは、若尾文子が従順な女性を演じるという配役にちょっと勿体なさ感があったが、最後まで見ると、若尾文子が聖子を演じたことに納得する。マイナーだが、キラリと光る作品と言えるだろう。
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