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沈黙ーサイレンスーのロビンのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.0
尺の長さでなかなか観れなかったマーティン・スコセッシ監督作品をようやく鑑賞。
とにかく全ての役者さん達が身体から作り込んでた。
とても熱量のある映画。 
それと小松菜奈を助けようと海に飛び込むアダム・ドライバーが観られる貴重な映画でもある。

異教徒を迫害して虐殺するって日本では全く無縁の話かと思いきやそうではない。
学生時代の歴史の授業で隠れ切支丹(キリシタン)や踏み絵に関してちょっと習ったぐらいなので、忘れていたけれど異教徒に対してとんでもない迫害と虐殺が行われていた。

そして人を救う為に信仰を広めているのに逆にそれによって人が命を落としてしまう、苦悩の物語でもある。
信仰とは真理とは宗教とは。
信じる神が違うという理由で人が人を殺めなければならない理由なんて無いはずなのに。

そして、やっぱり兎にも角にもイッセー尾形!
今作の敵役でありながら、絶対に嫌いになれないし憎めないチャーミングさ。
狡猾にして愛嬌たっぷり、イッセー尾形の演技観るだけでも価値あるかと。

そして途中から「いったい何回告解するんだキチジロー!」とツッコミたくなる窪塚洋介演じるキチジローが愛おしくなる。
彼は日本のユダとも言える人物で、切支丹弾圧に耐えられず棄教し、宣教師であるロドリゴをも役人に売る裏切り者である。
でも観終わるとイエス・キリストへの一番の狂信者はユダであるキチジローだったんじゃないかと思えてくる。。

それとちょっと驚いたのは、日本の描写が凄く自然なこと。
外国人が思い浮かべるへんてこりんな日本像ではなく、終始日本映画の時代劇と同じ空気感を醸し出していた。
さすがマーティン・スコセッシ!
それと音楽が一切無い。
まさにこれも“Silence”なのか。。

ただ出てくる日本人のほとんどが発音は置いといても、ほぼ間違いのない文法・単語を使って英語を喋ることに違和感があったのは否めない。。

【ネタバレ】
  ↓







劇中ずーと“神”は沈黙していた。
どんなに無惨で残虐なことが起きても。。
助けてくれることも無ければ助言すらしてくれない。
まさに“沈黙”している。
しかしながら、神は沈黙していながらもずっとロドリゴやキチジローを見て一緒に苦しんでいたんだと、最後にロドリゴはそう受け取ったのだと思う。
人間ってとにかく弱くて罪深い存在であり、神は人が苦しんでいる時に直接出て来て彼らを助けるようなことはしない。
人々の苦しみは神の苦しみでもあるけれど、あくまでも人間が自分で乗り越えなくてはならない試練なんだと。
神は人間の心の中でくじけないよう支えているだけの存在でしたかないのだと思う。
だからか“神頼み”なんかしても無駄なんだよ。
ロビン

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