ノラネコの呑んで観るシネマ

沈黙ーサイレンスーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.8
神は何処にいるのか、なぜ沈黙するのか。
さすがはスコセッシ。
パワフルなテリングで、全くダレることなく162分を描き切った。
日本という“信仰の沼”でダークサイドに落ちたクワイ=ガン・ジンを探して、カイロ・レンとピーター・パーカーが苦悩の旅に出る。
プロットは遠藤周作の小説に驚くほど忠実、というか殆どそのまんま。
原作同様に書簡のモノローグをうまく使う事で、ダイジェストを感じさせることなく、巧みに映像として再構成されている。
それ故に、あるアイテムを使った終盤の改変は議論を呼ぶかも知れない。
これはスコセッシ流の読み解きなんだろうけど、私的な小説の解釈とは少し違っていた。
もちろんこういう捉え方もアリだと思う。
特筆すべきは絶妙なキャスティングで、特に窪塚洋介のキチジローははまり役。
もう一人の哀しきユダの姿に、心弱き凡人は感情移入せざるを得ない。
塚本晋也のモキチは風貌のせいもあって、水架のシーンでは本当にキリストみたいに見えてきた。
信仰の本質と人間のあり方を問う、ヘビー級の力作である。
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