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沈黙ーサイレンスーのtakatoのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.1
 「神は救わない」
 「神は与えない」
 「神は裁かない」
 「神は答えない」

問い「では神とは?」

ー沈黙ー

(問いの木霊のみ)

 マーティンスコセッシ流石の巨匠の技前!。凄く重厚感、エンタメ感、思想感もあるしっかりした時代劇映画じゃん。こういう作品を日本人が撮ってないことに、邦画人は猛省すべき。特に霧や靄の使い方、水蒸気が多い国、日本の味わいを強調し過ぎなくらい強調している。

 俳優陣は、メインの若者二人組やリーアム・ニーソン以上に日本人俳優たちが輝いていたのが印象的。やはり演出する人がすれば、ここまで良くなるものなんだのう…。特に印象的だったのがイッセー尾形さん。弾圧の張本人なのだが、戯画化されたような悪人ではなく、穏やかで論理的で現実的な役人、即ち無信仰な日本人を見事に描いてらっしゃる。むしろ信仰に強固に縛られている主人公たちの方が、不合理に見えてきすらする。

 信仰の問題、これはドストエフスキーやトルストイのような偉大な人々すら敵わなかった問題であり、私の様な日本人にはとても扱い難い問題である。しかし、シュテファン・ツヴァイクのトルストイの評伝からの緩い引用が私の感じた想いである「石のように強い聖人ではなく、罪を犯し続ける弱い人間」、「それらの欠点を意識し続け、情熱をもって完成のために努力し続ける人間」、「完成した人間ではなく、道中なにおいて一度も休むことなく、より純粋な形式を求めて絶えまなく、休むことなく戦い続ける人類の象徴」。
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