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ゴッド・ヘルプ・ザ・ガールのFrengersのネタバレレビュー・内容・結末

2.4

このレビューはネタバレを含みます

 今作はかなり曖昧。まず主人公のイヴが抱えている問題や葛藤がなんなのかは不透明。各キャラクターの繋がりや離反も丁寧に描かれているとはいえず、映像のつなぎ方も少々唐突。イヴが歌いだすとき現実か自身の夢なのかもわからない。そして最も残念なのはそれぞれのキャラクターの心境を、映像ではなく自身の台詞やナレーションで説明してしまうこと。なのでオリー・アレクサンデル演じるジェームズとピエール・ブーランジェ演じるアントンの相反する要素をもつ二人のどちらにも寄ることなく自立するという結末は素晴らしいものの動機付けが見えない。美術が統一されているだけに勿体無い。意地悪く言えば、雰囲気映画である・・・と烙印を押してしまいたい気持ちもなくはない。

 しかし、その曖昧さに一つの筋道を立てることができる。それは「音楽」である。冒頭のラジオでのやり取り、挿入される歌といった要素以上に、本作の登場人物は全て音楽によって見初められ、名付けられた人達であるということ。ジェームズとアントンはアコギとエレキ、デビューしていない/している、一人に伝わればいい/大勢の前で歌いたい等々極端。その二人と同じライブハウスでイヴが出会うことになるのは、音楽に纏わる逡巡の象徴。彼女が吹き込んだテープが届かず、バンドのメンバーには理解されるのも、二つの要素を持ち合わせている彼女には一方をとることが正解ではないからではないだろうか。そんな引き裂かれるような葛藤を乗り越えることを青春の通過儀礼に重ねたのが本作。よく言えば素晴らしい絵空事、まるで優れたPop音楽を聴いたときのような。

 私にはコンセプトアルバムと映画の中間にあるような作品に見受けられる。本作はアルバムからのコンセプトを引き継いで作られたという。ただ残念ながら「四重人格」/「さらば青春の光」にはまだ及ばない。頑張れ、スチュアート!
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