Foufou

夜の片鱗のFoufouのレビュー・感想・評価

夜の片鱗(1964年製作の映画)
-
主演の桑野みゆきといえば、小津映画にほんのちょいと顔を出す庶民的な娘さん、というのがわたくしのイメージ。これが本作で女優人生をかけた一世一代の芝居を披露します。そう、桑野みゆきを映画史に残すための映画、とひとまずは言えるわけです。この点は、掛け値なしに凄い。

にしてもお相手のヒモの平幹二朗のマァ醜いこと。お歳を召されてから顔の作られた人なのかもしれませんね。あるいは整形でもしたか。軽薄さ・下品さの権化のような顔で、まさに適役でした。

今見るとあまりに生真面目に撮りすぎていて、表現の新しさはない、といっていいかもしれません。しかし桑野みゆきに加えられるヤクザらの制裁は、その生真面目さが奏功して異様な恐怖を与えます。トラウマになる人もいるんじゃないか。

1964年の作品。安保闘争のデモ隊のニュースを見ながら、街娼が「アンポってなんなのさ」と男に言いながら杯を煽る、こういうところを撮っているのがなんとも貴重。60年代の新宿界隈も映っています。東南アジアの地方都市を見るような新鮮さがある。

小津安二郎の『秋刀魚の味』が1962年。感慨深いものがあります。
Foufou

Foufou