Foufou

豚が井戸に落ちた日のFoufouのレビュー・感想・評価

豚が井戸に落ちた日(1996年製作の映画)
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ホン・サンスの長編デビュー作。
タイトルはことわざかなにかかしら。

若かりし頃のソン・ガンホがちょい役で出てきます。

かなりセンセーショナルな作品。
あからさまな性表現については、生理的嫌悪を催す人もいそう。初期のホン・サンスは、わりとこだわってた感がございます。

映画より小説向きかなぁとこの人の作品を見るたび思うんですけど、ああ、でもやっぱ映像だよなぁ……となって、なんだかよくわからない。ソウルの往来なんかを撮ると、出自はロメールやブレッソンを筆頭とするフランス映画なんだろうなぁとはわかる。明らかにソウルをパリの街市を見る目で見てますよね。

女が一人ソファに座っていて新聞を読んでいる。これが不意に立ち上がって床に新聞紙を広げていき、その上を踏んでからバルコニーに出る。こんなシーンを長回しで撮るなんかは、やはりシネアストであるわけだ。小説でやってもいいけど、あの不穏な感じはなかなか出ないのではないか。

見終えてまず浮かんだのが、シャンタル・アケルマンでした。『ブリュッセル1080』に横溢した不穏さにこそ及びませんが。時代の空気も、閉塞のありようも異なる(むしろ一周遅れて近いのか)。だから精神の同時代性とかなんとか論ずるには及ばないんですけど、なんだろう、被写体の身体に対するカメラの距離感が似ている気がする。あるいは、作り手の、他者の肉体に対する視線の距離感とでもいうか。もちろん、カメラの物理的な距離でなく。

キム・ギドクと双璧をなす人なんでしょうね。あちらは象徴に走るんですけど、こちらはケレン味はさほどでもない。ただお二人とも露悪だよなぁと。露悪は芸術の源泉の一つではある。前者は救いを目指す。しかし、後者は……。

やはり処女作を見ることは重要です。
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