思っていたのと違いました。
その相貌に似ず、露悪エンタメです。
勢い、ネタバレにならざるを得ません。
君はそれでもサイコパスを愛せるか？……って話です。救いようがないんじゃないかという見方だって、一方ではあるわけです。だからこれは正しく若葉竜也を愛でる映画。若葉竜也という俳優には、公私ともどもいい人であってほしいと切に願います。
格差とか、底辺とかを描けばそれだけで物語がリアルな力を持つわけではない。かえって鼻白む結果を招来することだってある。阪本順治の『顔』をふと思い出しました。テイストは真逆です。ただ、古臭いなーってしみじみ感じる点は同じ。市子に刺さる女子がどれくらいいるんでしょう。演技がどうのこうのの次元ではありません。劇中、こちらがいたたまれなくなるほどに女優が犯されていない（そう見えない）というのは、こういう映画においては致命的なのかもしれない。
人物造形も演出も生真面目過ぎるんだと思います。だからちょっと難癖つけにくい雰囲気ではある。でも例えばシークエンスごとに年月をテロップで逐一添えるとか、うるさくないですか。こういうのって、編集の妙で見せるものではないのか。
抑制が効いているように見えて、全体的にセリフも演技も説明的すぎて、絵がちっとも楽しませてくれない。若葉竜也がパティシエの女の子を尋ねた後のカメラワークとか、ちょっと白けました。杉咲花の演技も、私たちはエマ・ストーンのオスカー演技を知ってますからね、涙ポロポロばかりで、とても体当たりとは言い難い。
もっと淡々とやるのがよかったのか。「好きなものは味噌汁」なんてあざといセリフも、いっさい排して。音楽もちょっと情緒ダダ漏れでした。サイコパスな市子を描きたかったのか、サイコパスたらざるを得ない市子を描きたかったのか。その違いは雲と泥ほどにも歴然としている。
