<概説>
娘の治療費を工面するために銀行強盗を犯してしまったある一家。やっとこさ娘に快復の見込みが出た矢先、偶然父親が強盗犯であると知った刑事が来訪する。これが長い夜の始まりであった。
<感想>
本作を前情報なしに小津映画とわかる人、
これはかなりの少数派ではないでしょうか。
小津安二郎といえば有声映画以降の語りが特徴的ですから、サイレント要素がまず判別にネックとなります。
視線を観客側に合わせるショットにしたって本作は控えめで、このふたつの要素で初期小津映画はどう見たものか困るなあと。居心地が悪くてそわそわ。
しかし本作の特徴的なのはそれだけでなくて、ヒッチコック的とも言える導入もまた印象深いです。
舞台全貌を睨めつけるような長回し。
舞台全貌を見せまいとする闇夜の風景。
官憲の集団的捜索から姑息に逃げるある男。
得意分野でもないのに押さえるべきをきちんと押さえていて、こんなことも出来るのかと二度見しました。
今更書きながらヒッチコックより『第三の男』の方が近い気もしていますけれど。