改名した三島こねこ

その夜の妻の改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

その夜の妻(1930年製作の映画)
3.5
<概説>

娘の治療費を工面するために銀行強盗を犯してしまったある一家。やっとこさ娘に快復の見込みが出た矢先、偶然父親が強盗犯であると知った刑事が来訪する。これが長い夜の始まりであった。

<感想>

本作を前情報なしに小津映画とわかる人、

これはかなりの少数派ではないでしょうか。

小津安二郎といえば有声映画以降の語りが特徴的ですから、サイレント要素がまず判別にネックとなります。

視線を観客側に合わせるショットにしたって本作は控えめで、このふたつの要素で初期小津映画はどう見たものか困るなあと。居心地が悪くてそわそわ。

しかし本作の特徴的なのはそれだけでなくて、ヒッチコック的とも言える導入もまた印象深いです。

舞台全貌を睨めつけるような長回し。
舞台全貌を見せまいとする闇夜の風景。
官憲の集団的捜索から姑息に逃げるある男。

得意分野でもないのに押さえるべきをきちんと押さえていて、こんなことも出来るのかと二度見しました。

今更書きながらヒッチコックより『第三の男』の方が近い気もしていますけれど。