螢

彼の見つめる先にの螢のレビュー・感想・評価

彼の見つめる先に(2014年製作の映画)
3.7
みずみずしさと、甘酸っぱさと、幾分かのもどかしさに満たされた、青春劇。夏の明るい日差しと、からりとした空気感をうまく捉えた映像が、清涼な魅力を添えている作品でもあります。

目の見えない少年レオと、彼の幼馴染の少女ジョバンナは、大の仲良し。二人でプールサイドにのんびり寝そべりながら、いつか訪れるはずのファーストキスを夢想する彼らは思春期真っ只中でもある。
そんな二人が通う学校に、ガブリエルという巻き毛の少年が転校してくる。

目の見えない彼を心配するあまり、過保護になりがちな両親に、思春期特有の息苦しさと反発心を感じていたレオ。
とても自然に接してくれて、目の見えないレオにとっては初めての映画鑑賞や、両親には秘密の真夜中の外出に連れ出してくれるガブリエル。
二人はすぐに親密になる。けれど、そこには友情の域を超えたものが確かにあり、レオの親友だと自負するとともに、彼に密かな恋心を抱いているジョバンナはというと、親密になってゆく二人を複雑な気持ちで眺め、疎外感を感じているうちに、大切なレオと距離ができてしまって…。

個人的には、レオの一番をガブリエルに獲られてしまって悶々とする健気なジョバンナが本当に愛おしい。

特に、いくつかある学校がらみのシーンが好き。
目の見えないレオが、ジョバンナに、近くにいないガブリエルが何をしているか訪ねたときに、距離を縮めるレオとガブリエルに絶賛嫉妬中のジョバンナが、軽いことで有名な女生徒にガブリエルが話しかけられているのを見ながら、「ガブリエルは尻軽女とイチャついてる」的な、ちょっと脚色したことを言ってしまうシーンとか、もう、その乙女度全開のねじ曲がり具合、本当にかわいい。

本作は、恋仲になる男子二人と、そこに嫉妬しちゃう女子一人のお話です。
でも、きっと、この男女が入れ替わっても、全員が男子でも、はたまた、全員が女子でも、きっと、同じように、淡く、可愛くて、魅力的な作品になっただろうなあ、と思いました。
それぐらい、成長途上の若さ特有の微妙な感性の描き方や、それを彩る明るい映像が巧み。

同性愛と障害を取り入れた作品ですが、シンプルな展開と、爽やかな映像のおかげもあり、重くも暗くなく、ティーンエイジャーらしい恋のお話として、最初から最後まで、すんなりと鑑賞できる魅力的な作品でした。

LGBTや障害をテーマにした作品として、というよりは、少女漫画を楽しむ感じで観る作品ですね。
螢