Solaris8

野火のSolaris8のレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.0
8/13 立川市のシネマシティで、野火を観た。人間の極限を描く映像とシアターの音響設備で心臓を抉られるような臨場感が凄かった。個人的に重いシーンが苦手なので目を背けていたが観たくないシーンは無理に観る必要は無いと思う。

人間の尊厳を破壊する極限状態の凄惨な集団心理が辛く悲しい。映画の中で主人公は、肺を病み、極限状態の残存兵の中で心理上、最下層に位置していた。ある日、廃墟のキリスト教の教会で、現地人を殺してしまうが、見つけた塩のおかげで集団心理上、生存競争で優位に立ち、結果的に生還する。凄惨な現場を経験し、人を殺して生き残った事で心的外傷を煩う事になる。

終了後、塚本監督の舞台挨拶が在り、毎年夏の野火の全国上映を希望していたが、戦争体験を風化させない事が重要なのだと語っていた。

前日、広島出身の新藤監督の「陸に上がった軍艦」を観たのだが、生前、20億かけても原爆シーンを撮影して映画化したいと言っていたそうで、フィリピンで、どんなに酷い出来事が起こっていたとしても、その事実を忠実に再現し後世に遺す事に意義があるのだと思う。

話は脱線するが、塚本監督の舞台挨拶が終わった後、人が少なくなった劇場の座席灯が灯籠のように思えて郷里のお盆を想い出した。映画を観る前にシネマシティ近くの国営昭和記念公園を散策したのだが、戦時中は特攻隊も飛び立ったと云う旧立川基地も静かな夏休みを迎え、子供連れの親子が楽しそうだった。
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