Solaris8

モスクワは涙を信じないのSolaris8のレビュー・感想・評価

モスクワは涙を信じない(1979年製作の映画)
4.2
春分の日からの三連休に、東京に遠征してシネマヴェーラ渋谷で「モスクワは涙を信じない」を観た。

田舎から出てきた3人の女性がモスクワ郊外のアパートで一緒に暮らして、働きながら良い結婚相手を見つけようと奮闘する。3人の中で主役の女性は資格獲得をめざして学ぶ努力家だったが、知識階級の男性に労働者階級の女性として切り捨てられて未婚の母となり、痛手を負う。

20年の歳月が流れ、未婚の母になった女性は努力の甲斐もあり工場長になるが、今度は女性の身分に釣り合う男性が見つからない。そこに身分は低いが腕が確かな技術者が現れてその男性と恋をする。

メロドラマ風ではあるが、人として、どうあるべきかを描く、ヒューマンドラマに仕上がっていると思う。作品のプロパガンダ性も薄く欧米の国の作品だと言われても遜色がない。当時の社会主義国の若い女性の様子が、この映画の通りのイメージだったとすると欧米と大きく変わらない事になり驚くが、現代のキャリアウーマンの姿を描く映画としても十分、通用する内容だった。

映画のタイトルの「モスクワは涙を信じない」は「泣いたところで誰も助けてはくれない」というロシアの格言だそうで、新型肺炎に揺れる東京では「東京は涙を信じない」の様な予断を許さない状況になった。1980年のモスクワオリンピックは西側諸国のボイコット問題に泣いたが、東京もオリンピックが新型肺炎の影響で一年延期になった。

翌日、荒川河川敷の小さなマラソンを走りシネマヴェーラ渋谷で「秋のマラソン」を観た。その後、偶々、東日本大震災の復興映画の「春を告げる町」の監督のサイン会が在った。東京には春を告げる桜が咲き始めていたが、何時もよりも人出が少ない静かな東京の街が映画のモスクワの街と重なって見えた。
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