エンポリオ

野火のエンポリオのネタバレレビュー・内容・結末

野火(2014年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

着飾ることをしない戦争映画。
大岡昇平原作の小説を映像化したもの。飢え、死、裏切り、希望の抱けない世界。その中を生き抜いた田村に残ったものとは。
様々な戦争映画を鑑賞してきたが、中でもかなりの覚悟が必要な作品だと言わざるを得ない。視覚的な強い刺激はもちろんのこと、田村の置かれる状況を巧みに映し出す演出に精神的にもかなりの負荷を強いられる。
他の戦争映画には感じられるような物語の要素も皆無で最終的に主人公は報われるのだろうという期待さえも抱けない。しかしその分目を背けたくなる程に露骨な後世への思いが観る者の胸を叩く。
どうにか戦地から戻った田村を映した終盤の数分間は筆舌に尽くしがたく文学が映像へと変換される中で見られる効果的な表現がそこにはある。愛すべき自宅に田村が見た景色は命があることまでもが苦痛になってしまうという地獄を表しているように思えた。
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