このレビューはネタバレを含みます
妻を亡くしたディヴィスは空腹を満たすために自販機でチョコレートバーを買おうとするが、詰まって出ていかない。
係員に尋ねるが業者が担当しているの一点張りだから、仕方なく苦情の手紙を書くことにした────。
純文学のような繊細な映画でした。
原題は「Demolition」つまり解体、または破壊。
「すべてを解体して、理解して、元通りにする」ことで自分の感情を探したディヴィスの物語。
美しい邦題だけど、原題の方がしっくりくる。(一番言いたいこと)
「If it's rainy, you won't see me,if it's sunny, you'll think of me」を「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う」はちょっもやりすぎ。本編終了時点のディヴィスの気持ちならしっくりくるから邦題のための訳としては素敵。
でも、作中の字幕も同じ役にするのはなんだかなぁ。タイトル回収したいがために、意味が通りづらくなってる。これなら直訳して、原題のままでいいよ。(蛇足)
その破壊は冷蔵庫から始まり、彼自身の職や地位を経て、思い出をも壊すためにカレンに接近する。
カレンとその子クリスとの交流を行う中で、金融マンとしてルーティン通りに過ごす日々の中では気にも留めなかった些細なことに触れることが増えた。
破壊活動の集大成として妻との思い出が詰まった我が家の破壊の最中、彼は妻が妊娠していた事実を知った。
そして、妻は他の男とデキていたと悟ったディヴィスはパーティで義父母から妻の妊娠がたしかである旨を伝えられ、確信を得るため、「ずっと尾けていた男」を待つ。
しかし、その男は妻の不倫相手ではなく、衝突自己を起こした男だった。
男はずっとずっと遺族のディヴィスのあとを追いながら、謝ることができずにいた。ディヴィスはその男に自分を重ね、涙する。
そして、車に戻りサンバイザーにあったメモを読む。
「If it's rainy, you won't see me,if it's sunny, you'll think of me」
(雨の日なら私を観ないだろうけど、晴れの日は私のことを思ってね(直訳))
それは、妻がサンバイザーを自身の比喩とした愛の言葉であった。
妻の愛に気づくディヴィス。
ここで義母の言葉の意味を取り違えていたことも理解した。
その後、彼は妻の基金を使って、障がいをもつ子どもたちのためにメリーゴーランドを回すことにする。
基本的にディヴィスがロクなことを挙動をせず、画面が過激で楽しいので見落としてしまったと思うのですが、チョコレートの自販機、銃殺ゲームのように、多くのメタファーを用いながら、物語前半までのディヴィス自身の自己理解と再構築の道のりを丁寧に描いた作品です。
純文学のような丁寧な描写には感心する一方で、基本的には一人の人間の再構築なのでテーマ自体はダイナミックではない点、私という人間の嫌な部分が「いやいや、こんだけ胸にひっかかってて妻のこと嫌いはないでしょ」と言っていた点もあり、この点数となりました。満足度は高いです。