こなつ

世界一キライなあなたにのこなつのレビュー・感想・評価

世界一キライなあなたに(2015年製作の映画)
3.6
今年最後は、ハッピーエンドのラブストーリーにしたいと思って選んだ作品は、全く予想外のお話でした。

ジョジョ・モイーズの恋愛小説の映画化。原題は、「Me Before You 君と選んだ明日」他のレビューにもありましたが、こちらの原題の方がタイトルとしてずっと相応しい気がする。

バイク事故で車椅子生活となり生きる気力を無くした青年実業家と彼の介護に雇われた女性の切ない恋の行方を描いている。

というあらすじを読んだら、誰もがありがちなラブストーリーだと思うでしょうが、この作品の軸になっているのは、身体障害者の尊厳死というかなり難しい問題だった。

ルイーザ(エミリア・クラーク)は、最初はお金のためにだけ働き始めた介護の仕事。見た目が変わったファッションのただの田舎の女の子。お喋りが好きで、陽気。気難しいウィル(サム・クラフリン)にとっては受け入れ難い存在に見えたが、彼女を見ているだけで楽しかったのだろう。人を明るくさせるそんな魅力がルイーザにはあった。

ルイーザが長年付き合っていた体育会系の恋人パトリックを簡単に振ってしまうところ、バイク事故に合う前のウィルの元カノが彼の親友とあっさり結婚するというところ、そんなもん?簡単過ぎない?自分の幸せだけ求めて突っ走る恋愛は、どこか観ていて共感できない。でもこの映画は恋愛自体がメインテーマではないので、そこら辺のストーリーは目を瞑るしかないのだろう。

脊髄損傷で、両手足が不自由なウィル。話は普通に出来るし耳は聴こえる。テレビや映画も観れるし歌も歌える。普通の人以上の知能があり常識もある。それでも生きていくのが辛いというのは、本人にしかわからない生きていられない理由なんだろう。そういう状況になった人にしかわからないと思っても、もっともっと辛い状況でも頑張っている人が多いと思うと残念で仕方ない。

ウィルに惹かれていき、何とか彼の決心を覆そうとしたルイーザ。自分の考える幸せをただ押し付けているだけかと思っていたウィルの愛が、ラストシーンで語られ少し救われる。

そうは言っても親に理解しろというのは無理。親は諦めないで欲しいのだ。どんな困難があっても前に進んで欲しいのだ。最後はどうしても親側の立場で観てしまった。

ジャネット・マクティアは凛としてとても素敵な母親を演じていた。息子の選ぶ道を何としても阻止したいと思いながら、結局は寄り添う親心があまりに切ない。

エド・シーランの甘く優しい歌声が、映像の流れにマッチしていて温かく響く。

愛の形に正解はないかもしれないが、当たり前の今の幸せの有り難さに気付かせてくれた作品だった。
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