小波norisuke

アイ・ソー・ザ・ライトの小波norisukeのレビュー・感想・評価

アイ・ソー・ザ・ライト(2015年製作の映画)
4.0
ハンク・ウィリアムズという人物も、彼の楽曲も歌声も、全く知らなかった。しかし、この映画のなかでトム・ヒドルストンが何曲も披露するハンクの楽曲は、トムヒの魅力と相まって、どれもとても(息がとまりそうなくらい)セクシーだ。

音楽の才能にも容姿にも恵まれていながら、ハンクはいつも愛情に飢えているように見えた。二分脊椎症による背中の痛みを紛らわすために、アルコールと鎮痛剤に依存し、短気で、時に暴力的になる。愛情深さがかえって災いして孤独を深めてしまう。ハンクの家庭生活はうまく行かない。

「アイ・ソー・ザ・ライト」というタイトルには希望を感じるが、ハンクが作詞作曲し、愛唱していたゴスペルソングからきている。ハンクが、心の深い闇の底に、光を見ていたのだと思うと胸が熱くなる。ハンクが歌う歌には、彼の心の闇と光が滲み出ているからこそ、人種も世代も超えて人々を魅了したのだろう。この影のある主人公を、トム・ヒドルストンが繊細に演じていて、圧倒された。

トム・ヒドルストンのファンである私の評価はインフレしているかもしれないが、トムヒのファンでなくてもこの映画のトムヒは称賛したくなるのではないか。もう冒頭の歌声で胸をわしづかみにされた。見事なアメリカ南部のアクセントも、とても魅力的だ。

たった一つの難点は、カントリー歌手トムヒをこのタイミングで観ると、どうしても彼の今の恋人との関係まで連想してしまい、複雑な気持ちになること・・・。映画のよさとはもちろん無関係だけれど。
小波norisuke

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