ふじこ

ギヴァー 記憶を注ぐ者のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

ギヴァー 記憶を注ぐ者(2014年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

うーん、おもしろSFから後半へ行くに従ってガバガバSFへと変貌してしまう。

白黒の風景なのは、色による差別そのものを失くすため。
家族と言う名の、血の繋がらないただの単位。
妬み、恨み、嫉妬などの感情と引き換えに、愛を認識する感情自体を抑制された人類。
全ては、人種や格差による嫉妬を失くすため、全てを平均した社会を築く為にそうされている。

主人公ジョナスは、一定の年齢により授けられる一生の仕事として、記憶を受け着くレシーバーという職業に任命される。
ギヴァーと呼ばれる、前任の記憶保持者により記憶を受け取り、それを時代へ次ぐ役目の様子。
幼馴染で親友の男の子は上空から治安を守るドローンの操縦士、もう一人の女の子は子供の扱いが上手いので養育師に。
この世界は全て分担されており、子供を生むのもその役目のものが、生まれた子供は、”家族ユニット”と呼ばれる単位で管理され、そこへ送られる。
全ては世の平均のため、格差を失くすために。

ユートピア/ディストピアものとして、かつて大戦を経験しそこから復興したコロニーとして全てが管理されている世界で、かつての美しい世界、感情のある世界、一方でそれらがあるために戦争を引き起こし、人が人を殺す世界は職業として記憶を引き継ぐ者しか知らない。

そこに就任した新任”記憶を受け継ぐ者”レシーバーである主人公ジョナスが世の中の美しさを知り、愛を知り、絶望を知り、それでも心のある世界の方が良い、と選択する物語。

白人、黒人、アジア人等の差別をなくすために白黒の風景なのが、記憶を受け取るにつれ色が付いていく演出は良かったなあ。

記憶を受け継いた事により、幼馴染の女の子への愛情を自覚し、更に子供の養育センターで働く父親の元に預けられたとにかく泣くために扱い難い子とされた弟のような存在の赤ん坊、そして冒頭の職業を選定される儀式で紹介されていた、高齢者が送られる"よそへの開放"が命の選別だと知って行動を起こす。

この辺までは面白く観ていたのだけれども、コミュニティの外に"記憶の境界線"なるものがあって、それを超えると失っていた筈の記憶が蘇るらしき設定がイマイチ。
必要ないなら全て遺失させてしまえば良いのに、なぜ記憶を受け継ぐ職業があるのか、なんで”記憶の境界線”なんてものを残しているのか、一人が突破すればコミュニティ全体に感情が戻る謎、最後のログハウスがなんだったのか、だいたい謎で終わってしまう。
そもそも大戦からこのコミュニティが設立するまで時間が空いてそうだし、世代がいくつか過ぎてそうだけれど、誰の記憶なんだ、あれ。
元が児童文学だそうで、感情は大事だよ~でも、あっても差別はしちゃだめだよーと言う教えのみしかないような。

命を選別するのは良くない、としたとしても、突然色や記憶が戻った住人たちにしてみたら、今後どうなるんだろう。同じように差別が始まり、同じ歴史が繰り返すだけなんじゃないのかなあ。それとも、とりあえず習慣付いていそうな朝の投薬で当面は抑制できるんだろうか…。
ふじこ

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