R

ギヴァー 記憶を注ぐ者のRのネタバレレビュー・内容・結末

ギヴァー 記憶を注ぐ者(2014年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2014年のアメリカの作品。

監督は「ヒラリー・スワンク ライフ」のフィリップ・ノイス。

あらすじ

近未来、人々は争いのない平和な理想郷「コミュニティ」で生活を送っていた。そんなある日、友人と共に職業決定の日を迎えた青年ジョナス(ブレントン・スウェイツ「ヘル・フィールド ナチスの戦城」)は首席長老たちから「レジーヴァー(記憶を受け継ぐ者」という大役に任命される。そこで「ギヴァー(記憶を注ぐ者)」である老人(ジェフ・ブリッジス「ホテル・エルロワイヤル」)に様々な記憶を受け継ぎ始めたジョナスは文化や歴史に加えて、愛や憎みといった感情を知り、困惑するが…。

U-NEXTにて。タイトルやパッケージからしてなんかB級感が漂ってナメて観たんだけど、これがなかなかに深い内容の作品だった…ただし、結論から言えば面白かったかどうかと言われると…。

どうやら原作は向こうで有名な児童文学小説の実写化らしい。で、始まって観るとなんと上述のジェフ・ブリッジスやメリル・ストリープ(「ドント・ルック・アップ」)といった俳優界の重鎮たちも出ているというからにはこちらも襟を正して観ざるを得ない。

で、お話はようは「ディストピアSF」もの。人々が暮らす「コミュニティ」という場所は完全に統治された世界観の中で、投薬により感情や感覚を抑制され、一見争いのない平和な世界を維持しているが、言っちゃえば面白みもなんともない中で生活している。

で、その表現として前半はすべてモノクロの画面で展開していく。まぁそういった世界観を表現するにはどストレートな演出ながらこれがなかなか効果的。観てる側は自然と「こういう世界観なんだ」と認識できる。

あと、やたらと機械的に感じるこの世界の人々の常套句である「あなたの謝罪を受け入れます。」だったり、家族も「家族ユニット」と呼ばれる小さなコミュニティでしかないようなグループの中で生活していたりとここら辺はよりSFらしさも感じさせる。

で、主人公のジョナスがそれまでの成績や人柄みたいなものを評価されて「レシーバー」に任命されたことで「ギヴァー」から「記憶」を受け継ぐことになる。

で、なんとなく予想できると思うんだけど、その「ギヴァー」から記憶を受け継ぐ中で段々と「もの」や「事象」の性質を知っていき、世界が色づいていく。

はじめは部屋に置いてあるリンゴから記憶の中で航海中に昇る朝日の美しさだったり、雪景色の中でソリを走らせる「楽しさ」だったり…。

起こっていることは、本当に我々が普段経験している「ちょっとした日々の記憶」だったりするんだけど、それでもそれまでそんな経験をしたことがないジョナスなもんだから一つ一つに感動し、かけがえのない経験として成長していく。


ただ、もちろん人の「記憶」を覗くのは楽しい嬉しいことばかりじゃなくて、例えば戦争中、親友が戦火の中で被弾して命を失う瞬間だったりと先代レシーバーもそのせいでリタイアに追いやられた記憶の「影」の部分を体感し、困惑するジョナス。

そんな様々な「記憶」と「感情」を知ったもんだから、そりゃそれまで自分が暮らしていた世界がどこか「おかしい」と感じるのは当然なわけで単独で行動を開始する…っていうとははぁ、じゃあこっからはジョナスによる「革命」が開始されるわけね!と思っていると、それがまたそういう方向にはいかない。

というのも、ジョナス自身は過去の世界で「憎しみ」から「争い」に発展した経緯を知ったものの、対するそれ以外の人たちはそんな「記憶」がないもんだから、そもそも争いに発展しない。

だから、途中途中誰もそのせいで亡くなったりしないし、展開としては「おかしくなった」ジョナスを元に戻そうと説得する方向にいくので凄まじく地味な展開になっていくわけ。

途中、ドローンから逃げるチェイスシーンがあったりとサスペンス描写は織り交ぜるものの、うーんやはり結果的に「これじゃない」というか、思ってた方向にいかない感じなのは否めない。

ただ、その中でもコミュニティ側のトップであるメリル・ストリープの「ある意味」達観した考えの長老がいい感じで、終盤ジョナスに感化されて、意識改革の途中捕まったヒロインのフィオナ(オデイア・ラッシュ「クリスマスに降る雪は」)に対して言い放つ「愛は気まぐれな熱量」は個人的に名言だと思う。

だからこそ、そんな長老たちに対して人が生きていく中で宿る「記憶」や生まれる「感情」の素晴らしさなんかをもっとわかりやすく伝えられたら「感動み」も増すんだけど、別に決着がつくわけでもなく、続編ありそうなまま終わる感じで、結末への着地が個人的には中途半端だったかなぁ…。

あと、やっぱ初めて画面全体に色がつく「その瞬間」もなんかもっとこう…あるでしょうよ!!月並みなんだけど、それでもなお心を打つエモーショナルなロケーションが!!なんかそこの感動も不完全燃焼なんだよなぁ。

なんか思うようなところにピッタリと当てはまらないというか…。題材や白黒の演出なんかが効いていた分、「惜しい」作品だった…かなぁ。
R

R