ニューランド

カルメンのニューランドのレビュー・感想・評価

カルメン(1915年製作の映画)
3.4
☑️『カルメン』及び『男一匹の意地』▶️▶️
『平原児』辺り迄はともかく、比較的目にする戦後の作は、『十戒』を始め凡庸と言うしかないデミルのイメージだが、40数年前、『チート』『男性と女性』『十誡』らの、力の漲るサイレント作品を何本か観て、印象は一新した。この『カルメン』も初期作品⋅かつ短尺めで、同室内、室内外の対応が、サイズや染色の選択に齟齬が生まれ⋅甘い気もするが、出入りどんでん、寄りサイズ入れ、の力強さは素晴らしく、何より斜めめや俯瞰めもスッと採用した構図、そして生々しく堂に入ってるとしか言い様のない、適切とか上手いとかの褒めをはねつける俳優らの嵌まり⋅存在感はホンモノと云うだけだ。ラストの刺した瞬間のその行為をオフとして2人のMサイズ愉悦のカット替え、折り重なり抱き合うかのような断末魔以上の形、も正に堂に入ってる。
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  そうすると、初めてデミルの価値を認めた作品で、強烈な印象を放った早川雪州だ。幸い、今回のリストにある。
『男一匹~』こんな本宮ひろ志の漫画のようなおかしなタイトルの映画は観てない筈と通う。しかし2シーンめ、邸から庭園に出て、しまった、観たことがあると分かったが、レベルはなかなかに高い作。そのまま見る。
辛亥革命後なれどまだまだ旧い体質を残す中国で新しい空気も呼吸し始めてる上流の青年が、アメリカ留学を終え帰る段になって、故国で待ってる筈の身分低い恋人(どう見ても中国人というより西洋人)が叔父の差し金で売り飛ばされ、近くにいることを知る。実家が反対な以上自ら働き、賭け事もして、買い戻す金を得るも、名うてのワルに囲われ手離さない。友人の死も起こる、死闘が繰り広げられる。
集中力はともかく、セット⋅美術⋅ロケ⋅衣装の豪華さと同時にいかがわしさも漂ってくるスケールと質、プリントがあちこち欠損してるが、離れた位置、人の塊り、の角度対応や⋅角度の変え方⋅寄り図と全図⋅カッティング緩急が、実に精緻で細かい。『カルメン』から数年で映画の話法⋅デクパージュは一気に進化している。それに振り回されがちとしても。
何より早川雪州だ。目の鋭さ⋅顔の造作の端正な力⋅動きの攻めと受身の一体柔軟さ、正に時代と世界の、スターであり⋅アクターであり、イコンだ。彼と五分に渡り合う、陽と陰、三船と山本礼三郎みたいな、強烈敵役も、日本人らしい(勿論、米国の中国人らの話だが)。
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