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コングレス未来学会議のpikaのレビュー・感想・評価

コングレス未来学会議(2013年製作の映画)
4.0
キタキタキタ!ディストピア!
ある程度型が決まってしまっている(と勝手に思っている)ディストピア界に新風現る!といった新鮮な映画だった(何年も前の映画に対して今更すぎるが)
クスリのくだりがつい最近読んだばかりの「素晴らしい新世界」を彷彿としてめっちゃテンション上がった。
繋がらないはずの点と点が線になったような感覚。息子の難病とハリウッド、ひいては資本主義の極地みたいなディストピア世界が超個人的な事情と繋がる。
ロビン・ライトを本人役で起用したことで巧妙に混乱させスムーズに世界観に没入させるところが上手い。あちこちに点在させた混乱によって観客が自ら解釈しようと前のめりに能動する姿勢を利用し、途中でアニメーションになり、ディストピアのドラマへと変わっていく展開を抵抗なく受け入れられるよう誘導させている。

ディストピア設定がめちゃんこ楽しい。「素晴らしい新世界」はドラマ化だけされているようだが映画化はされていないのはなぜだと考えていたので、これがある意味その映画化にあたるとしたら面白いなと。原作はあるみたいなので違うだろうけど。「素晴らしい新世界」をもし映画化したら一番問題になるのが世界観の説明部分になると思う。そこが一番の魅力だが2時間前後で説明していたらドラマが進まず映画のバランスが崩れる。そこをアニメっつー見て一瞬でわかる別世界を表現したのは凄く良い。想像しやすく、わかりやすい。
アニメパートが意外にも長いなと感じて見終わったあと調べたら作品カテゴリーはアニメーションだった。元々アニメの監督だからアニメベースに実写をくっつけた構成なのかな。実写パートのお金のかかってないっぷりとアニメのクオリティの高さに納得。
どうやって生命を維持しているの?とか仕組みは?とか色々疑問は出てくるけどそこらへん全部すっ飛ばす潔さが良い。ある意味煙に巻いているとも言えるけど細かいことを気にしてたら楽しくないぜみたいな空気を映画の中で作り上げている。全て納得いくように説明していたら映画として成立しないし、むしろ野暮というようにアニメーションでガツーンと見せてしまうパワー以上の説得力などないと見せきってしまう。
ハリウッド批判も欲望の追求もディストピアもオマケ程度に抑え、最初から最後まで女優と息子の話として一貫しているから細かい疑問点なぞ無粋だと跳ね除けられて、メインのドラマを楽しみながらオマケ部分に込められた伝えたい部分がガツンと響いてくる。

母が女優だったから創造側の視点からも見れるという設定はディストピア映画で直面する説明部分を省略するのに見事な設定だと思う。映画版「1984」の唯一の難点はまさにこれ。
ディストピア、いやSFものが映画よりも小説の方が親和性が高いというのもこの設定説明の部分なんじゃないかなと。説明部分が醍醐味であり魅力であるが映画では映像で見せなければ面白さは半減してしまう。小説であるから良いものと映画映えするものはやっぱちょっと違うから、そこをどう見せて楽しませるかが難しく、また魅力になる点でこの映画は若干チート的ではあるが上手いし、説得力のある完成度だった。
不満点もいくつかあるが幻覚よろしく思考せずスルーできる範囲。

スキャンマシーンはテンション上がる。昨今の大作を見ているとマジで俳優がCG化しているから生々しい。
ハーヴェイ・カイテルの下りが若干嘘くさく、マジなのこれ?みたいなあやふやさが良い。配役が絶妙。
基本的にロビン・ライトにあまり喋らせないところも良い。設定が中年〜老年期なのでギャーギャーとパニックを起こさず終始落ち着いて受容する様は安心して見ていられる。
娘のオチだけよくわからなかった。
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