いつの時代のどこともいえない世界のシーンを絵画的に次々と切り取ってきて、淡々と続いていく。
全てのシーンがスタジオ撮影とはとても信じられない出来で素直に感心した。
全てのシーンのトーンを統一することで、バラバラなシーンに統一感が生まれ、なんだか絵本を読んでいるような気分になる。
そして絵本のように単純な話を重ねることで、メッセージが浮かび上がってくる。
それはやはり最後のシーンでヨナタンが言っていた
「他人を利用して自分の欲望を満たすのか?」
ということではないだろうか。
自分の欲望や痛みには敏感で、他者の痛みや気持ちには鈍感な世界。
他者を楽しませたいとおもしろグッズを売り、泣き虫なヨナタンこそ自分の欲望にも他者の痛みにも敏感な本来あるべき人間の姿ではないか。
通じる人には通じるブラックユーモアを投げかけてくる監督の姿と、おもしろグッズの紹介をするたびにスベっているヨナたんの姿もオーバーラップする。
唯一の友達であるサムがヨナタンに言った言葉「哲学者気取り!」というのも監督が投げかけられて傷ついた言葉なのかもしれない。
人々を楽しませたいけど上手くいかなくて、痛みに敏感で泣き虫で、悪意が怖くて、そんな監督の生き方が、そこここに散りばめられているようだ。
特にヨナタンの怯えていた夢の内容、黒人達をスピーカー付の悪趣味な樽に入れて焼き殺し、シャンパンで静かに乾杯しながらそれを眺める白人の老人達の姿は、グリム童話的な残酷さと悪意と寓話性に満ちていて、示唆に富むシーンだった。