てるる

ハングリー・ハーツのてるるのレビュー・感想・評価

ハングリー・ハーツ(2014年製作の映画)
3.7
「その愛は狂気にも似ている」

これは「千年女優」のキャッチコピーだけど、まさにこの映画にもあてはまる。

オープニングのくっさいトイレでのコミカルな出会いからは想像もつかないラストへのギャップが逆にキツイ。
妊娠をしたあたりから不穏なことを言い出す妻。
静かに狂気が彼女を蝕んでいくけど、それが正しいと思い込んでるから質が悪い。そして皆が皆、子供のことを思っての行動だからこそあの結果は切ない。
この話が絵空事ではなさそうなのが余計に怖い。
そして極端にアップで写し撮るカメラとザラついた映像が更に不穏感を煽る。

妻役のアルバ・ロルヴァケルはあまり知らない女優だったけど、だんだんとガリガリに痩せていく身体と鬼気迫る表情に圧倒される。
夫役のアダム・ドライバーも妻と自分と家族の間で苦悩する演技は今まで観た中で一番良かった。
ヴェネツィア国際映画祭で男優賞・女優賞をダブル受賞したのも頷ける。

何が正しかったのかは分からないけど、最後の子供と一緒に映るシーンだけが救い。
てるる

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