みんと

第三世代のみんとのレビュー・感想・評価

第三世代(1979年製作の映画)
3.9
ファスビンダー監督8作目は『13回の新月~』同様に自分の中で課題作でもあったコチラ。

ファスビンダーブームがやって来た今こそ何が何でも攻略する気満々で臨んだけど…
う~ん、やっぱり難解だった。
それでも、めちゃくちゃ引き込まれた。
いつの間にか強烈なクセを丸ごと受け入れられる準備が出来てた。

いや~もうカッコイイ!
アヴァンギャルドにしてスタイリッシュ!
構図、色彩に至っては変態的。
センスが溢れかえり、才能が爆発してる。右脳をこれでもかと刺激される。
…けど左脳は完全停止。

どうやらファスビンダー作品の中で最も難解にして自由な作品らしい。

理念なき行動だけの第三世代のテロリストたち。彼らは企業と警察に利用され、その煽動に乗って誘拐事件を起こすことに……。

“意志と表象としての世界“を合言葉にテロリストたちが複雑に絡み合っていく。そして監督お得意の雑音(テレビやラジオのメディア音)が常に会話してる後ろで流れる。
更には、とんでもない情報量、哲学的セリフ...
頭がクラクラする。

ただ、突き抜けた鬼才ぶりはビシビシ感じる。
オープニングから一気に引き込むセンスの嵐。とりわけ、冒頭とラストとの照応ぶりはもはやトリハダ。

それでも、やっぱり、ゴダールばりに難解かつ哲学的。

テロリストたちの七変化の中で、若きウド・キアの個性とインパクト!
そして、注目してたのはピエロメイクの正体。
まさかまさかのあの人だったなんて?!
1番の驚きであり、ますます目が離せなくなった。

ドイツのテロリズムにおける第三世代(戦後世代)が、本来の理念を失ってテロ行為が自己目的化し、結果として国家や資本家に利用される…。至ってシンプルなストーリーながら理解とは程遠いのは、敢えて複雑に解りにくくしてるかの監督の悪意すら。笑
ただ、観る側の感情をいちいち寄せ付けないドライで自由な描き方はやっぱり好み。

じっくり再見したい作品だった。


以下、個人的に強烈に頭に残った台詞を記録として。

「人間の存在が石よりも重要と言う事はない」はショーペンハウアーの言葉。
裏を返せば
戦争になればわかる
人の命は石よりも尊いのだと。


今や人間は生きる意味を見失っている
一度は戦争を経験すべきだ
人間の価値を知るために
さもないと戦間期や戦中の緊張感を忘れて
愚かな考えを起こす
愚鈍で臆病な考えを

そして印象的だった『惑星ソラリス』の話。

映画とは1秒25回の嘘だから
全て嘘であり同時に真実だ
そして真実は嘘の中にある
つまり、それが
映画なのさ
つまり映画では
嘘が真実の装いで示される
映画は唯一の小さなユートピアだ
みんと

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