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わたしに会うまでの1600キロのKKのレビュー・感想・評価

4.1
大学4年の11月、1人で旅に出た。

東京から夜間バスに乗って名古屋へ。名古屋城、ひつまぶしなど一通り名古屋観光をした後、刈谷ハイウェイオアシスというサービスエリアから、2日かけてヒッチハイクして東京に帰ってきた。

当時、何もかもがどうでも良くなっていた自分は、「自分なんてもうどうなってもいい」
「最悪死ぬだけだ、何も怖くない」そう思って人生初のヒッチハイクをした。

ヒッチハイクをして、自分が変われるかなんて分からなかった。だけど、何かをしなければ、自分を保てなかった。

シェリルもきっとそうだったんだろう。母親が死んで、クスリ漬けで男と遊ぶ日々。
このままじゃダメだと分かっていても、同じ環境にいたらなにも変えられない。

何かを変えるためには、今の場所から離れて1人にならなければならなかった。

どうして1人で旅をするのか。理解できない人には全く分かってもらえない。

1人じゃなきゃ意味がないんだ。とんでもない孤独と向き合ってこそわかることもあるんだ。


ただ歩いているだけでつまらないという意見もあるが、全くその通り。ただ、歩くだけ。
そんな旅に、なにかドラマティックなことは起こらない。

雄大な自然の中では、1人の人間の存在なんてちっぽけなもの。そこにドラマは生まれない。

だからこそ、シェリルの頭の中ではものすごい思考と葛藤が生まれている。ただ歩くだけ。その単純な作業で空いた脳のスペースが今までにない深さの思考を可能にする。
90日間歩くことで、彼女はどれだけの思考をしたのだろう?それは彼女にしか分からない。
本や映画にしても、その思考の一部しか知ることはできない。彼女は90日間、ひたすらに孤独と向き合い、過去と向き合い、自分と向き合っていたのだ。


僕もヒッチハイクをしている間、ものすごい孤独を感じたことがあった。初めてヒッチハイクに成功したあと、降ろしてもらったのは小さなサービスエリア。夜10時近くだったこともありほとんど人がいない。

わずかにいた人に声をかけてもみんな断られてしまった。僕はそこで車に乗せてもらうことは諦めて、4キロ先のカラオケで一夜を過ごすことにした。

その4キロは本当に孤独だった。見知らぬ土地で、街灯もない真っ暗な道を1人で歩く。頭の中にはいろんな感情が沸き起こる。普通に生活していたら絶対に味わうことのない感情だった。

ヒッチハイクした話をすると、驚かれるか笑われるか。どちらにせよ、本当に理解してくれる人は少ない。
僕にとってヒッチハイクは、自分が壊れないために、壊れてもいいと思ってやったことだったが、間違いなく自分の中で大きな経験だった。
その経験は、ヒッチハイクとそこで体験した孤独によるものだった。

僕らは孤独だ。家族といても、友達といても自分のことを100%理解してくれる人はいない。人はみんな孤独を感じている。

そんな時に物理的な孤独、本当の孤独を感じると何が変わるのかもしれない。


僕はまだ孤独を感じてる。誰にも分かってもらえない苦しみからいつか解放されるのだろうか。

それを知るためには前に進み続けるしかない。孤独の中でも歩き続けるしかない。



『迷うまでもなかった。できることは1つ。歩き続けるのだ。』

『勇気が君を拒んだら、その上を行け』

『人生は驚きの連続』
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