ぎー

予告犯のぎーのレビュー・感想・評価

予告犯(2015年製作の映画)
4.0
【中村義洋特集4作品目】
「それが誰かのためになるという間違いのない確信を得た時、人は利得を超えた行動をとることがある。」
・派遣切り、非正規雇用の問題、一度レールから外れたら浮かび上がれない実態を描いた映画。テーマとしてはありふれてるけど、サスペンスを織り交ぜつつ、主人公ゲイツをはじめとしたキャラクター設定も魅力的で、正直境遇は全く異なるのに共感を呼ぶ展開も素晴らしく、見入ってしまう映画だった。全く説教臭く感じないのはすごい。
・お父さんに会ってお父さんって呼ぶことが、生きがいを見出すことが、お腹いっぱいお寿司を食べることが、恋をすることが、友達ができることが、こんなにも恵まれたことだなんて思わなかった。一つ一つ幸せだってことを、改めて感じた方が良い。
・どんな些細なことでも人は動く。ポジティブにもネガティブにも。そのことをよく考えた上で、行動したり物事を喋ったりした方が良い。
・ちょっと描写が極端だったり、主人公の行動が鼻についたり、アクションが安っぽかったりする点があるのも事実。だから絶賛されてないんだと思うけど、個人的にはどハマりした。面白かったし、共感した。
⭐︎1番印象に残ってるシーンは、終盤4人でお寿司を食べる場面。彼らには家族も恋人もお金も仕事もない。でも、それでも、幸せそうだった。彼らの境遇を知らないで彼らを侮辱する権利なんて世界中の誰にも無い。生きていれば良いことはきっとある。

・新聞紙を被って自分達の犯行を予告する動画は見事だった。あれは完全に観客を欺くためのもの。もちろん一つ一つの犯行に意味はあるんだけど、彼らはもっと大きい大義のために行動してた。それをカモフラージュしてた。すごいと思った。
・序盤の制裁は、放火や昆虫食や性的暴行とか、一つ一つくだらないけど、逆にキャッチーでカジュアルで、映画の中の一般市民同様、観客が映画にのめり込んでいくために良いステップだった。よくできてる。
・サイバー対策班ちょっと弱すぎない。戸田恵梨香は好きな女優だけど、この映画では大根だった。
・主人公のゲイツの派遣先での境遇は本当に見ていて辛い。ちょっと大袈裟かもしれないけど、全然フィクションじゃないと思う。ああいう風に立場を良いことに侮辱する奴ら、虫唾が走る。
・フィリピン人の少年が死んだ後、4人が共犯になる場面は悲しかった。決して許されることじゃないけど、どうすれば良かったのだろう。
・小日向演じる政治家に対する抹殺の仕方は見事だった。確かに抹殺してる。
・結局ゲイツ達の目的は世間に問題提起しつつ、フィリピン人の父親を探すこと。戸田恵梨香は一瞬"そんな事"って言ったけど、友達が何よりも大切なゲイツにとっては命よりも大事な事だったんだろうな。
・ただきっと命より大切なものって無いはずだから、自殺は許さないでほしかった。
ぎー

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