プペ

高慢と偏見とゾンビのプペのレビュー・感想・評価

高慢と偏見とゾンビ(2016年製作の映画)
3.0
イギリスの古典的名作小説『高慢と偏見』のパロディ小説を原作とするこの異色の作品は、ゾンビ映画ファンにとって2016年秋の最注目作と言って良いだろう。
私は当然、ずいぶん前からワクワクを募らせていたが、2017年8月某日、ようやく鑑賞に至った。

まず、本作の日本版予告編。
この、本当に『高慢と偏見』という時代映画の予告が始まったかのような構成…当然、個人的に″ヨコデミー賞″候補である。

肝心の本編だが、これは言ってしまえばまぁまぁだった。
完膚なきまでに最悪というほどではないけれど、「良作」とは言い難く、口が裂けても「名作」とは言えない。
もちろん褒めるべき点も確かにある。

″拳で語り合う″という描写は本作独自の評価ポイントだろう。
彼女らは互いに戦いながら会話する。
『高慢と偏見』の映画化である『プライドと偏見』ではこんなことは決してできないわけだし、会話と動きで二重の意味合いを同時に表現するという点は、非常に映画的で素晴らしい趣向だ。
もっとも、論戦で勝利した者が体術でも相手を圧倒する、あるいは、会話では優位に立っている側が体術では負けることでその秘めた本心が象徴されるというような効果的な演出にはなっていなかった気もするが。

本作には良いところが随所に垣間見えるのだが、総じて悪いところが散見されるのもまた事実。
抽象的かつ決定的なことを言ってしまうと、本作は、″ゾンビ映画としては温すぎる″のだ。
「ゾンビ映画」というジャンルに必要とされる要素は、個人差はあるだろうが、基本的に「グロ」「終末感」「無常観」の3つ。
原則として『高慢と偏見』のストーリーをなぞる以上、後者の2つを完璧に盛り込むことは難しいかもしれないけれど、グロさに関しては何とでも演出できたはずだ。
仮にレイティングの関係上そこまでキツいグロ描写を採用できなかったのなら、逆に日常シーンをもっと荘厳に描くことでギャップを際立たせるべきだった。
こんな″バカ映画″なんて、バカ映画好きか予告編の前半だけ見て勘違いしたバカ野郎しか観ないのだから、突き抜けたバカさ、すなわち、グロ描写は必須と言ってもいいはずだったのでは、と、思わずにはいられない。


企画自体は面白く、要所要所で良いと思えるシーンがあることも事実。
とはいえ、全体としては「ゾンビ映画」を愚弄しているとも評されかねないユルユルの仕上がりとなっている。

一応、続編に繋げられそうな幕引きにはなっていたが、これ以上続けてももはや『高慢と偏見』をなぞれない以上、作るだけ無駄というものだろう。
まぁ、もしそれでも無理矢理やってしまうようなことがあれば、逆に製作陣の″生き残るんだ、どんな手段を使っても″という精神に私は一人のバカ映画好きとして感服してしまうかもしれないが。
プペ

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