二人が互いに惹かれ合う、繊細な心の動きを、丁寧に描写している。二人の鼓動が伝わってくるようで、胸が苦しい。ああ、恋をするって、こういうことだなぁと、忘れていた気持ちを思い出した。テレーズがキャロルに惹かれてしまう気持ちも、その逆も、とても共感出来る。二人の恋は、とても自然で、説得力がある。性描写も、とても美しかった。
モスグリーンや水色などの淡い暗めの色に、艶やかな赤を配したりと、計算しつくされた色彩の美しさにみとれる。音楽も、二人の心に寄り添うようで、心に沁みる。エンドクレジットまでも、恋する喜びと苦しさが滲み出ているように感じた。
同性愛に対する偏見が強かった時代に、自分らしく生きることを選ぶ二人に心を打たれる。とても勇気のいることに思えるけれど、二人にはそうするしかなかったのだとも思う。
ケイト・ブランシェットの低く発声した声が、キャロルという愛情深く、誇り高き女性にぴったりで、魅力的だ。そして、感受性の強い女性テレーズを演じたルーニー・マーラの繊細な心理描写にすっかり引き込まれる。ぜひオスカーを獲ってほしい。