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ヘイトフル・エイトの3104のレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
3.6
ひさびさタランティーノ。とはいえ前作から2年も経ってはいない。なぜそう思うのか。もっと彼の作品を観たいからか。良くも悪くもタランティーノという名前だけが口数少なに独り歩きしているように感じてしまう。彼の新作を観たい。ただそれだけだ。10本で引退なんて言わずにこれからも饒舌に作品を生み出してほしい。

映画は序盤の長話(デス・プルーフ)、疑心暗鬼の展開(レザボア・ドッグス)、時系列の遡上(パルプ・フィクション)、鮮血ドバドバの描写(ジャンゴ)など、これまでの彼の作品群を思わせる要素がいくつも見受けられる。長い長い“序盤”でセットされた仕掛けが、合図一発で連鎖的に作動してゆくような仕組み。
ただし先に挙げた作品の類似はあれど、どの作品にもどこか届かない印象。決して“タランティーノ的爽快感”(これが好きな人は、作品がどれだけ長くてもついていけるはず)がなかったわけではないが、イマイチ突き抜け切れていない。密室劇という設定から見るに『レザボア・ドッグス』に一番近いが、ヘヴィながらも笑いにつながる楽しさが盛り込まれていたあの映画から、その「楽しさ」を抜いた感じ。脚本流出などの影響のほどはわからぬが、どこか“スッキリ”を手に入れられないまま、作品が自分の目の前をゆっくり通り過ぎていったような気持ちが今も拭えず。

タイトルは「エイト」だが厳密にはそれ以上の人物がいることについて。
・HateとEightの韻
・自身の長編8作目
・ミスリード
などと推測(邪推)。

ストーリーはさておき、密室会話劇というのもあり今作はどうしても個々の役者に目がいく。
悪役顔マイケル・マドセン、歳取ったティム・ロス、“疑心暗鬼映画”といえば『遊星からの物体X』だよなぁカート・ラッセル、今回ピカイチだったと思うジェニファー・ジェイソン・リー・・そして出番は少ないがゾーイ・ベルの笑顔に心が温まる。

しかしオリジナルの雰囲気や余韻を全く消し去らんとする日本版ポスターおよびキャッチコピー、そしてCMには今さらながら辟易である。
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