改名した三島こねこ

ババドック 暗闇の魔物の改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

ババドック 暗闇の魔物(2014年製作の映画)
3.1
ホラーというよりは発達障害の子供の育児疲れについての映画であるようにしか見えない。
というのも作中明確にババドックを認識したのはアメリアだけで、サミュエルがそれを知覚したかについては明示されていない。怪現象についても家という閉鎖空間内での物語であり、これがアメリアの狂乱の痕跡であると断言されても否定の術がない。
またアメリアは終始病的な精神状態であるように描写されており、彼女のストーリーテリングには懐疑的な視線を向ける必要がある。

それを考慮に入れると本作はハッピーエンドとは言い切れないのではなかろうか。彼女を追い込んだのはトラウマのみならず、サミュエルへの接し方についてもかなりの責がある。
「子供には理解者が必要」というスタンスは間違っているとは言えないが、彼女のそれは理解ではなく思考停止だ。実際サミュエルを野放しにした結果、サミュエル本人も含め誰一人として幸福にしていない。ラストも一見幸福に見えるが、ババドックというアメリアの暗部が解消されていない以上、サミュエルとの関係の中でババドックは再来するだろう。

ここから読み取るべきは親子の無性の愛よりも、「愛することと全肯定することは違う」だとか「理解することは躾を放棄することとは違う」といったことであるべきだ。実際アメリアが狂気の中で威圧的な態度を獲得した時、サミュエルはある程度社会的な態度を取れたわけだから。
少なくとも母親に包丁やボウガンを向けるような精神状態は、是正可能であるならばいかなる手段でも是正せねばなるまい。あれが現代社会で無条件に認可されるパーソナリティとは言いがたい。

なにより精神に異常を感じたら専門医のアドバイスを受けることにしよう。それだけでもババドックはまずいなくなるはず。