Utopia

奇跡の2000マイルのUtopiaのレビュー・感想・評価

奇跡の2000マイル(2013年製作の映画)
3.8
2015/09/10
果てしなく続く雄大な砂漠は、時として人にとっては脅威となる。赤い砂漠、白い砂漠、黄土色の砂漠、一言に砂漠と言っても様々な形態があり感情豊かドラマのもう一人の主人公となる。そんなオーストラリアの過酷な砂漠を横断する若く美しい女性の話。

橙色に溶ける夕陽と照らされたロビンが、砂漠と一体化したようなシーンが幾つも見られ、美しいキャメルの輝きを放つ。それだけで映画の価値としては十分かもしれない。煮え切らない現状に満足する事なく、若さゆえの無謀となけなしの希望を胸に旅立つ彼女は道中でいくつもの絶望に面することになる。野生のラクダや愛犬の危機に遭遇した時、迷いながらも生を選択するさまはドラマティックだ。

とはいえ、旅で起きた出来事や原作を忠実になぞらえたのかいずれにせよ展開には突拍子もなさが感じられ、リックと男女の関係になる運びや終点に辿り着くまでの過程には性急であった。

日に焼けた肌は痛々しく、砂にまみれて社会通念を断ち切ったミア・ワシコウスカはそれでも美しい。意思の強い眼差しと諦めそうにになりつつも不屈の精神を見せるあたりが何よりも素晴らしい。
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