ヴェルヴェっちょ

博士と彼女のセオリーのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
4.5
いくら著名な理論物理学者の実話を基にした映画といっても、ベタなラブストーリーであれば興を削がれていたに違いない。 けれど本作はそうじゃない。
もちろんラブストーリー仕立てではあるが、恋愛だけにとどまらず、彼の半生をそのまま切り取ったかのようなリアリティに迫力がある。

天才物理学者として将来を嘱望されていたスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)がケンブリッジ大学の大学院に在籍中、詩を学ぶジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い、二人は恋に落ちる。
だが直後にスティーヴンは難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症、余命2年の宣告を受ける。
そんな彼と共に生きると覚悟を決めたジェーンは、一緒に病気と闘う道を選択し、やがて二人は結婚、そして出産。
時には壁に突き当たり、限界を感じ、自身の無力さに打ちひしがれるのだったが、二人は強固な絆で立ち向かっていく…。

2018年3月14日、享年76歳で亡くなったホーキング博士。
生前に公開された本作でも描かれているとおり、その生涯は波瀾万丈。衣食住でさえ困難な難病に罹りながらも、最先端の研究に邁進し続けたその精神力には恐れ入る。

筋肉が徐々に衰えていくALSの苦しみは、患者でなければ知りようもないだろう。そう思うにつけ、ほぼ目の動きだけで病状を表現したエディ・レッドメインの怪演に度肝を抜かれる。

ただのラブストーリーで終わらない。絶望に打ちひしがれるだけでも、憐れみを受けるだけでもない。人生はそう簡単に「わからない」。
時にユーモアを交え、人生はもっと多様な可能性に満ちていることを示唆しているような映画だった。