父母ともに癌

我々は有吉を訴える 謎のヒッチハイク全記録の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

3.2
まだ再ブレイクしていない有吉弘行が山形県酒田市〜宮城県の松島までヒッチハイクするモキュメンタリー。

モキュメンタリーというくくりでオッケーなんだろうか。フェイクドキュメンタリー?ドキュメンタリーというていで、有吉がヒッチハイクしていくんだけど、意図的に或いはやらせ含みで悪事を繰り返していく。ボラットとかブルーノとかジャッカスに近い空気感だとは思うけど、それらとは話のスケールも巻き込む人間も過激さも随分劣っている。
又、ディレクターがナレーションも兼ねていることもあり、悪事を繰り返す有吉をディレクターが困ったり怒ったりしながら記録していく、という風情になっている。
なので風刺の対象があるとするなら、前述のそれらよりも随分スケールの小さい、テレビ番組、特にロケ系旅系のものに対してのそれで、テレビ番組が作った有吉弘行という人間のヒッチハイク人格へのそれだったと思う。
何かが暴かれるわけでも、化学反応が起こるわけでも無く、有吉とディレクターの相互了解の中で、二人がもめる。その揉める材料を田舎の人々、素人に求めている、という感じで、ドキュメントの部分、つまり素人との絡みにおける有吉の悪事はあくまできっかけに過ぎず、その悪事によって見えてくる真実があるわけでは無い。
見えてくるのは「ヒッチハイクを実は真面目にやらない有吉」という作られたキャラクターだけなので、そういう意味でテレビ的安心がある。

しかし有吉という人間がただヒッチハイク野郎じゃないことは十分にわかる内容だし、ディレクターもそれを意図してこの映画を撮影しているから、それでいいんじゃないか、と思う。

有吉のテレビでニコニコするに止まらない黒い魅力を引き出すのに良い設定だ。ガチ感があるところで悪感をだすという。
しかしながら、やはりあくまで「感」でしかない所に私は退屈を感じるけれど、有吉のタレントを売り出す、という目的がある以上「感」より先には踏み込めないので、コンセプト上私が感じる退屈は仕方のないことだし、これをきっかけとはいわないけれど、こういった「悪感」のプロデュースの結果有吉は現在の地位を気づいていて、我々を楽しませてくれているんだから、まあ、もう、それでいいじゃない、っていう映像でした。
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