さすらいの旅人

ベルファスト71のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

ベルファスト71(2014年製作の映画)
3.7
幼い弟を愛するイギリス新兵が見た北アイルランドでの悪夢
【VOD/Amazon Prime/配信視聴/シネスコサイズ】

ベルリン国際映画祭、英国アカデミー賞など各国で絶賛された映画と言う事で鑑賞。
戦争地域の映画ではなく、宗教対立等の紛争地域でのサバイバルアクション映画は珍しいと言える。一般市民の多くが普通の日常を送っている紛争地域独特の雰囲気は異様に感じる。

主人公のゲイリーはイギリス軍新兵として紛争地区の北アイルランドのベルファストに派遣される。しかし、当初は単なる警備と思っていたが住民の反抗が激しく正に戦場化していく。軍は危険を感じ撤退するが、ゲイリーは銃を奪われたまま一人取り残される。そして、絶対絶命の悪夢は始まる。

本作に銃撃戦アクションを期待してはいけない。あくまで紛争に巻き込まれた一兵士の逃亡劇なのだ。住民の中には敵対する者や味方になってくれる者など様々な人物が登場する。しかし、どんな状況でも身の危険を感じ、休まることはない。
映画全体に漂う何とも言えない暗さと重さ、そして緊張感は半端ではない。

撮影と音楽が素晴らしい。
ドキュメンタリー映画のようなリアルな視点は、観客がその現場に居るような錯覚に陥る。また、狭い路地での追跡劇の華麗なカメラワークには息を飲んだ。
そして、アコースティックギターによる悲しげな音楽が心に響く。まさに孤独な兵士の心情と、住民同士が殺し合う悲惨な世界を表現していた。

イギリスと言う先進国での民族や宗教対立の闇を、見事にクローズアップした作品と思う。