ジョージ

おみおくりの作法のジョージのネタバレレビュー・内容・結末

おみおくりの作法(2013年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ゆっくりと穏やかに進むストーリーと場面展開につられて、いろいろと考えさせられる映画ですね。
人は生まれてから、一瞬、一瞬、自らを変化させながら、死によって変化を終えます。人に変化を与えるのは、その人を中心にした他者であり、自然であり、モノで、それらはその人を中心にしてできる、いわば「場所」です。生まれてすぐは父母や兄弟のいる家庭という場所ですし、やがて親戚の人や近所の人など父母を介した場所ができ、そのうちに小学校、中学校、高校、大学あるいは職場といった父母から少し離れた場所ができて、友達やクラブ活動の場所を作ったり、勉強や遊びの場所を作ったりします。
つまり、人生とは、その人がどんな場所を持っているかを辿ることなのだろうと思います。

最近は家族葬も増えて来て、葬式に亡くなった人の関係者が集まることが少なくなっていますが、葬式とはまさにその人とのつながりと関係性のある人たちが一堂に会する場所で、その人が築いてきた場所(同級生の仲間や同僚など)のすべてを確認できる場所と言い換えてもいいかもしれません。命を亡くすのは一つの生命体ですが、その人が築いた場所は、場所を語り継ぐ人が無くならない限り続きます。

ジョン・メイが、死者が残した写真や手紙やモノを頼りに見つけようとしていたもの、それはその人が築いていた場所だろうと思います。壊れていた場所を修復し、場所を取り戻してやること、それが死者への唯一の弔いだと思っていたのだろうと思います。
最後のシーンは、長いショットで墓地の風景を映していたので、ジョン・メイが亡くなったことによって、場所を修復する人がいなくなったことを強調するのかと思ったら、突然、現れるシーンは、「そうかジョン・メイの半生を示す場所はここにあったか」という展開で、「そうきたか」と思わずつぶやきました。