mさん

地上の星たちのmさんのネタバレレビュー・内容・結末

地上の星たち(2007年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

どんな子供たちも必ずとてつもない才能に溢れてる。だから絶対見捨てないであきらめないで。というメッセージが伝わった。

まずこの話はイシャーンがどのように成長していくかと言うよりかは、イシャーンという一見教育するのが難しい子供たちに対して教育を終えた大人たちがどのように接するべきなのか?を語った映画だと思う。だけど、1時間というかなり長い時間ラーム先生が出てこない。この映画のスタートラインはそこな気がするけど中々出てこなくて、ひたすらイシャーンの文字に恐怖したり、うまく適応できない姿が描かれる。多分物語的には「イシャーンは勉強ができず、みんなは諦めてい。」さえあればいいから20分くらいの描写で終われるんだけど、なぜこんなに長くイシャーンが描かれるのか。単純に長いなと思う部分もあるけど、一番はイシャーンの勉強する姿勢を何回も見せたかったからだろう。イシャーンは失読症なので文字がある度に躓く。英語でも算数でも国語でも躓く。その結果イシャーンは勉強が嫌になり外を眺めてしまったり、教師に反抗的な態度をとったりする。この反抗的な顔や、攻撃的な態度が何度もあるので大人たちはみるみるイラついてくる。大人の立場に立ってみれば、ふざけてると思ってしまうのだ。テストに1つしか回答を書かないのはテストが苦手なのではなく、テストをなめてると思われてしまうのだ。文字が読めないという部分はどうしてもイシャーンにしかわからないことなので、イシャーンは文字が踊ってると周りに伝えてもふざけてると思われて聞き入れてもらえない。文字が踊っているなんてふざけるのもいい加減にしろと大人は思ってしまうのだ。こう見ている観客も少しだけそう思わせるところにこの長い1時間の導入はある気がする。イシャーンを単純に悲劇の主人公として描くんじゃなくて、9歳ならではの反抗した態度や、ふざけた姿勢をある程度包み隠さず長く見せることで、勉強が苦手というより勉強をなめているんだコイツはと周りの大人が思うことに観客を引き込んでいく。だからこそ後半ラーム先生から子供たちには可能性がある、間違えには法則性があるという部分に「そうだったのか」とお父さん側の立場になってまともに言葉を受け止めることができる。冒頭長いのはそういう意図があるのかなと思った。本当にイシャーンの反抗的な態度がいい意味で彼への才能や可能性を見逃させるので凄かった。あと途中のホームビデオも凄い、本当に役者さんを使った過去映像なのかなと思った。

ラーム先生が出てきてから加速度的に面白くなっていった。あの人のフワフワしながらも真面目でグサッと人の心に刺さり言葉を抜き出すシーンは毎回鳥肌が立つ。段々文字を読んだり書いたりする授業を2人でやっていく一連の流れはすごく良かった。段々イシャーンがラームさんに近づく描写がいい。ただ個人的にはラストが少し納得できなかった。この話はどんな人にも才能があるっていう話でイシャーンの場合それが絵なんだけど、最後お絵描き対決で1位と言った明確なコンペティションがあったのがちょっと違和感だった。ラーム先生も誰かと競争をする、競争主義を否定していたのに、結局才能に気づかせるために誰かとの競争で1位になるっていうのがちょっと違和感があった。まずもしイシャーンが1位になれなかっったらどうしようと思ってたんだろう。余計才能ないって思っちゃうんじゃと思ったし、競争なしで全員の想像力を肯定してあげられるようにできなかったのかなと思った。あと英語とかの先生は絵が下手っていう部分も少しだけ脚本の都合を感じた。冒頭厳しくイシャーンにあたってたから、ここでスカッとジャパンのような展開にしようという意図が少し感じられた。誰の絵も肯定しては欲しいし、絵に優劣はないと思ってるから、100歩譲って絵を描いた先生本人が「おれの絵が下手だけどイシャーンは凄いな」って自分で言うとかならいいんだけど外野の人が先生の絵を見て笑ったりするのは結局なんかやってることが同じな気がしてしまった。または先生は絵を明らかに適当に描くとかだったらいいんだけど、結構ハマったりしてたからそれをバカにしちゃうのはちょっと良くないかもと思った。

イシャーンの才能が突出してるってやるために順位だったり他の先生の絵が下手っていう要素が入らざるを得なかったんだろうけど、ちょっと途中の誰にでも可能性がある、競争社会の否定と矛盾してるなと結構違和感を感じてしまった。

やっぱり絶対的に長いし、ミュージカルを全て残しても2時間くらいにできた気がする。話運びとか教育についてとかはどちらもきっとうまくいくの方が好きだった。カメラの撮り方も回り込みとか動きはあるけど、どこかただ映してる感じがする。会話シーンのカット割とか、最後の凄い人が集まってるあの絵画大会とか。

ただイシャーンの演技がすごいいいし、ラーム先生のキャラも好き。パラパラ漫画のシーンでは思わず母親と同じような気持ちになった。ちゃんとイシャーンの絵が素晴らしいって、絵があまりわかんない自分にもわかってそこはよかった。
mさん

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