マグルの血

セッションのマグルの血のレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
3.9
公開当時話題になってたなあなんて思いながら再鑑賞。

若きジャズドラマーがとんでもないパワハラ指揮者の元で悪戦苦闘する話。とんでもないパワハラ。1拍も演奏しないうちにビンタして「テンポが違う!」と怒鳴り散らし、人間性や家族やらを全面的に否定。ちょっと持ち上げたと思ったら音楽人生終わるレベルの意地悪したりと、フレッチャーの性格の悪さが嫌というほど楽しめる胸糞映画。

…と見せかけて、意外とそういう映画じゃないかもなんて再鑑賞して思ったりしました。

物語は実にシンプル。脇道にそれることも複雑な伏線もなくわかりやすい。そのわかりやすいストーリーに奥行きが隠されているようにも感じられ、思ってる以上に立体的な作品とも言えるとも思います。

「愛のムチ」と捉えることもできるし、完成された芸術品を作り上げるための「道具」として扱っているとも。何かしらの要因から若い芽を摘みたいだけ?才能への嫉妬?

明確な答えがないまま、映画史に残るであろう名演でこの映画は幕を閉じます。圧倒的な演奏シーンですが果たして本人達の手応えは?そして観客の反応は?

芸術という答えの無い文化。正解がわからなくても、ある程度自分の中で納得できるものをよに送り出したいと考えるものだと思います。
その納得のラインは人それぞれ様々で、その受け取り方も様々。文字通り血のにじむ努力をしても「私にはわからない」とまったく伝わらないこともあれば、技術的にも学術的にも拙い曲や演奏が「名曲」「名演」と持て囃されることも。全てはタイミングだったりなのかなと考えるんですが、ホントにこればっかりは誰にもわからないもんです。

ただ、この映画を最後まで観て、プラスの感情が生まれるのであれば、それは作り手と受け手の納得がマッチしたのかなと思います。そういうことが言いたいのかなって。

それにしても私ジャズには疎いんですが、ララランドといいデイミアン·チャゼル映画のジャズは聴いてて気持ちがいいです。
マグルの血

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