マグルの血

ポゼッサーのマグルの血のレビュー・感想・評価

ポゼッサー(2020年製作の映画)
4.0
乗っ取った他人の身体で任務を遂行する殺し屋が元の身体に戻れなくなった話。

予告編をチェックしてからずーっと観たかった映画です。
「他人の身体を乗っ取り殺しをする。脱出するには死ななければならない」というルールで行う手口。SF的な設定や装置がたまらない。人生ベストが「インセプション」や「マトリックス」な私なので、絶対嫌いなわけがないと。非常に楽しみでした。

ブランドン·クローネンバーグ監督は「インフィニティ·プール」の監督でもあり、こちらも気になっていた作品。となれば、タイミング的には今かなと満を持して鑑賞させていただきました。

で、映画を観た感想なんですけど、思ってた感じと違ってました。が、大変満足です。ありがとうございます。


一言で言えば「気持ち悪い」映画ですね。人間の中身、心理的な気持ち悪さだったり。がっつり人体破壊するフィジカル的な気持ち悪さも。設定もふわふわしてて不快。あらゆる角度からの不快感が逆に心地いいというか、なんか変な映画観れたって印象。

乗っ取った他人の身体から脱出するには死ななきゃならないっていう、非常に迷惑な設定の殺し屋。主人公タシャはこの装置を使う人殺しの顔と、別れた夫と子供に見せる母親としての顔の2面性がある人物。

この相反する2つの顔の両立が困難で、殺し屋の任務中にトラブルがって話かと思ったらそういうわけでもなくて。

乗っ取った身体の本体が自我を取り戻して主人公の邪魔をする話かって言ったらそういうわけでもないし。

とにかく意外な方に話は進み、結構ズドンとくるオチで終わる映画。考察のポイントが多岐にわたって広がり、自分の中での落としどころが見つからない。その気持ちよさっていうか、あんまり味わったことない感覚です。

他人を乗っ取る描写や心理状態の表現は濃いめのSFと言いますか、ビジュアルがクールでとても好み。
血液量が以上に多いバイオレンスなシーンも、グロいというより、鮮やかに目がいきます。

洗練された映像、複雑な登場人物の精神状態。説明を極力省いたミニマルな表現ですが、視聴者の想像力を最大限に刺激する意欲作かも。

手放しで名作と騒ぎ立てるほどではないですが、B級とか隠れ良品なんて言葉で片付けるのももったいない作品かな、と。やはりこの手のSFは好みであること変わらないです。

新作、改めて気になりますね。

2024年 37本目
マグルの血

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