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セッションのchelseaのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

だから何?と思ったのが正直な感想。フレッチャーに愛情はなかった、どうやらマジでのやつだった、しかし主人公がセッションに戻り執念で主導権を握って立場が逆転し、あの圧巻のラストシーン…となってもウソでしょ?!て感情が尾を引いて、いわゆるカタルシスを得るに至らなかった。主人公があまりに過酷な練習を積んでいたためそれが報われることばかり求めすぎていた。あの教官のサイコ性なんて考えもしなかった。でもよくよく考えたら主人公もだいぶおかしいのでおかしい人同士のおかしい合戦。そしてそれを途中でぶつ切られたそんな感覚。そもそもラストでフレッチャーが主人公のドラムに合わせて指揮を執り始めたのはあれはあれでフレッチャーショーであり、内心は反撃していたのでは?サイコならやり得るのでは?もうサイコに裏切られた感が強く響いてだったら結局どっちが勝ったのかはっきりして欲しかったし、はっきり描くなんてのは野暮だとわかっているし自分の読み取り能力が低めなのも承知しているけど、どうしても途中で放り投げられた感が払拭されなくて、あえてのあのラストであるならば、ではあえてのだから何?となって正解のような気もする。正解なんてないけど。
自分がこの映画で一番好きなシーンは親族や昔馴染みとの食事会での会話劇。アメフトが最高な典型的で古典的な親族たちに音楽の道を見下され、汚い業界とまで言われ、もうそんな価値観の人たちに何言っても無理なんだけど、それでもあのメンタルを盾に精一杯反撃する主人公が愛おしいですよ。アメフトでMVPを取ったと自慢するいとこの父親に対し「でも大学の中でも三部のチームだろ」と口走ってしまうがそれでも音楽界では最高峰の学院に在籍していることなど取り合ってもらえずどの切り口なら自分の努力を認めてもらえるかわからない、悔しい悔しいその気持ちがよく伝わってきた。まだ二十歳そこらのうら若き青年の、漠然と何かをストレートに追う姿はエネルギーに満ち溢れていて、たとえ血みどろになっていても清々しさを感じた。
お父さんはこの主人公を良く育てたし、息子にはさりげなくとも本当は全力でバックアップしていたあの存在感の薄いお父さんを思うとラストシーンより泣けます。
心に残る映画だった。
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